33話 初詣
1月1日、午前10時。
お正月と言えば初詣──ということで、僕は家から徒歩10分ほどの神社まで、歩いてやってきた。
「あ、つれみー!」
「連宮君、こっちだよー!」
ごった返している神社でみんなを探していたら、高波さんと三上さんの声が聞こえた。
声がした方向を見てみると、高波さんと三上さん、そして根原君──の3人が待っていてくれた。
全員私服だった。振袖とかは高校1年にはまだ早いよね。はたして僕が振袖を着れる日は来るのだろうか。
「みんな、お待たせ! ……待たせちゃった?」
「いや、俺たちもちょうど合流したところさ。連宮君を探しに行こうとする高波さんを必死に止めてたところでもあるね」
「探しに行っちゃうと、すれ違う可能性もあったからねー。ここで待っていよう、って自分と根原君で説得してたんだよ」
「そうだったんだ……って」
根原君の言葉で頬を紅潮させ、三上さんの言葉で泣きそうになる高波さん。
「ん? ……た、高波さん!?」
「どうかしたの、根原君? ……うわ、高波さん! ご、ごめん!」
僕の視線を辿って高波さんを見た二人、そんな状況を理解して焦り始める。
「いいもん、どうせ私馬鹿だもん。すれ違うかもしれないなんて考えつかなかったもん」
「ごめん高波さん! さすがに言い過ぎた!」
「ごめんね高波さん、根原君が甘酒おごってくれるから、泣き止んで?」
「ああ、甘酒くらい買って──なんで俺が!?」
三上さんの言葉を聞き、ゆっくり泣き止む高波さん。
『なんで俺が……?』と未だ理不尽を受け入れられずにいる根原君の顔を覗き込み、上目遣いで訊く。
「甘酒、買ってくれないの……?」
「……買えば許してくれますか」
「はい」
「……買いますぅ」
半ば自棄の根原君。その肩にそっと手を置き、『お疲れさま』のサムズアップ。
「連宮君は優しいね……連宮君だけが癒しだよ」
「あ! つれみーを口説こうとしてる!」
「違うからね!?」
今年に入っても、ツッコミのキレは落ちていない根原君。最近いじられキャラになってきたのは、彼にとって幸か不幸か。
──それは一旦置いといて。
「まずは、あの言葉を言っておこうよ!」
「あの言葉? ……ああ、なるほどね。私も賛成!」
完全に泣き止み、いつもの笑顔の高波さん。
「そうだね、自分たちもまだ言ってなかったね」
「ああ、すっかり忘れてたよ。お正月はあれを言わないとね」
三上さんと(立ち直った)根原君も賛同してくれた。
『せーの』でタイミングを合わせて、いつも通りに元気に。
『あけまして、おめでとうございます!』
◆◆◆
お参りを済ませて、甘酒を飲みながら1時間ほど話した後、解散した。
それぞれ、親戚と会う予定があるのだ。お正月だから仕方ないけど、少し寂しい。
そんなことを思いながら帰っていると、前方に知ってる人を発見。
髪型で分かった。──月夜野君だ。
嬉しくなって、走りだそうとした足を、すぐに止める。
「……誰だろ」
月夜野君の右隣に、僕と同年代くらいの女の人。
時々会話しながら、笑いあっている。その内容から察するに、その女の人の名前は『美月』。
すごく親し気に話している。羨ましいなぁ。
「……へ?」
僕今、羨ましい、って思ったのかな。
自分で言ったことなのに、言葉の意味が分からない。
──友達として、羨ましい、ってことでいいのかな?
「……帰ろう」
なんで羨ましく思ってるのかいまいち分からないまま、僕は家へと向かった。




