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夢見少年物語  作者: イノタックス
6章 冬休みと3学期

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32/81

32話 大晦日はおごそかに?

12月最終日、午後1時、高波家にて。


「今年の目標は、大晦日をおごそかに過ごすことです!」


異様に高いテンションの高波さんが、クッションから立ち上がり手を掲げて、唐突に語り始める。

オレンジジュースしか飲んでないはずなんだけど、酔ったみたいにテンションが高い。要するにいつも通り。


「今年って、あと半日もないけど」

「知ってまぁす!」


根原君の冷静なツッコミに負けず、高波さんのハイテンショントークは続く。

今日の高波さんは敬語キャラらしい。


(……あれの影響だよね)


視線を本棚に向ける。

夏休みに来た時にはなかった小説や漫画が、本棚にいくつか並べられているのだけど──その中に、登場人物が敬語で話す小説があったのだ。それに影響を受けたのかも。

真菜に勧められたから僕も読んでみたけど、結構面白かった。下町育ちの活発な少女が、中学に転校してきた臆病な少年に恋をする、という小説。少年は誰に対しても敬語で、そこが気になった少女が少年に関わっていくうちに、少年の秘密を知っていく──という、ガールミーツボーイなお話。


「今年の目標立ててなかったから、今立てました!」

「そっか、それなら大丈夫だね」

「ええ、大丈夫なのです!」


口調は変わってるけど、テンションはいつものまま。そのおかげか、敬語なのを誰も指摘していない。……こんな高波さんに慣れちゃってるだけかな。

というか高波さん、活発な少女じゃなくて臆病な少年の方に影響されたんだよね。──よく分からなくなってきたから、それについて考えるのはやめよう。


「高波さん、おごそかに……って、具体的にはどう過ごすの?」

「ん? ……静かに過ごせば、それっぽくなるんじゃないかな」


三上さんの問いに答えて、高波さんは再びクッションに座る。正座で。

立ち上がる前は胡坐をかいていたから、少し『おごそか』に近づいたかも。


──と思っていたのだけど、少しぐらついている。正座をし慣れていないのかな。

胡坐を続けている根原君と三上さんを羨ましそうに見ている。『おごそかに過ごす』って言った手前、そう簡単には胡坐に戻ったりしないのだろう。

ちなみに、僕はいつも通り、クッションの上に正座している。アヒル座りまではいかないくらいに、足を開いて。厚みのあるクッションの上だから、この座り方が一番楽なのだ。


「あ、そうだ!」


何かを思いついたらしく、また立ち上がる高波さん。


「来年の目標を立てようよ!」

「まだ早くない?」

「つれみー、何事も早く済ませないと。人生損するよ?」


正座しつつ『やれやれ』と自信満々に諭してくる高波さん。本当にテンション高い。大晦日だから?


「来年のことを言えば鬼が笑う、ってことわざが」

「ねはらっち、おばさんみたい」

「おば──っ!?」


何事にも動じないと思っていた根原君、ここでまさかのダウン。


「連宮君、高波さんに言い返して」

「僕が!? ……今のは仕方ないかな、うん」

「連宮君もそっち側かー!」


両手を床につけて落ち込む根原君。

それを見て『自分もことわざ大好きだから気にしないで!』とフォローする三上さん。なぜかあたふたしている。

根原君を三上さんに任せて、高波さんはまたまた立ち上がって語る。


「私の来年の目標は、……──」


そこで止まって、クッションに正座する。

えっと、来年の目標は?


「まだ思いついてません!」

「そ、そうですか……」


つられて、僕も敬語で返す。

──さっきから気になってたんだけど。


「高波さん、足しびれてる?」

「へ!? し、しびれてないですけど……なにゆえ」


頻繁に立ち上がっているから、多分しびれてるよね。

何よりの証拠と共に、伝える。


「ずっと足の位置を調整してるんだもん、気付くよ」

「バレてたの!?」


バレてないと思ってたの!?


「自分も気になってた。高波さん、ずっと足をパタパタしてるから」

「みかみんにもバレてたー!? うわーん!」

「ちょ、高波さん!?」


両手を床につけて(根原君と同じ状態で)落ち込む高波さん。

また三上さんがあたふたしている。


「俺、おばさんみたいなの……?」

「足しびれてたの、バレてた……」

「ふ、二人とも、元気出してー!」

「……ふふっ」


そんな三人を見て、自然と笑いがこぼれていた。

結局、おごそかな大晦日にはならなかったけど。


「俺、まだまだ若いし……」

「私にはまだおごそかは早かったの……?」

「二人ともー!」


騒がしい大晦日も、アリだよね。


そんな会話を2時間ほどして、解散の時間に。大晦日だから、今日は少し早めに帰ることにしたのだ。

落ち込んでいた二人もいつの間にか回復していて、途中からはそれぞれの部活のこと(根原君はギターのこと)を話した。

短かったけど、たくさん話せたから満足。また明日、初詣でいっぱい話そう。



そういえば、来年の目標を立てるって話はどこへ。

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