31話 大掃除
2学期が終わり、冬休みに突入。
今日は安喰先輩──部長と三上さんと共に、部室の大掃除をしていた。
大晦日まであと四日、お正月まではあと五日。もうそんな時期なのだ。
「……なんだろ」
三上さんはお手洗いに行ってるから、今は部長と二人っきり。
何を話したらいいのか分からないまま部室の隅をほうきで掃いていると、掃除用具を入れる縦長のロッカーと壁の隙間に、一枚の紙切れを見つけた。
紙切れというか、写真?
「これ、もしかして……部長!」
「ん、どうかした? ──って、面白いものを見つけたね」
それは制服姿の橋崎先輩と安喰部長の、ツーショットだった。
橋崎先輩はにっこり微笑み、部長は緊張している様子。二人の後ろには、校庭の隅にある桜が咲き誇っていた。
「これって、部長が1年生の時のですか?」
「そうだよ。失くしたと思ってたけど、まさか部室の中にあったとはね。入部してすぐの時に、五十嵐先輩が撮ってくれたんだよ」
「へぇ……!」
写真の中の部長は、すっごく初々しかった。
高校に入って、まだひと月くらいしか経っていない時に撮ったのだから、当たり前だよね。
「──懐かしいなぁ」
どこか遠い目で、寂し気に、部長はそう呟いた。
その当時部長には、部活の先輩が二人もいた。でも──橋崎先輩が部活をやめて、今は自分が一番先輩。文句は一切言わないけど、やっぱり寂しかったのかな。
「……よし、掃除終わらせて、少し小説書こうかな!」
「そうですね、僕も頑張って掃除しちゃいます!」
部長と一緒に『おーっ!』と手を掲げ、気合を入れる。
「……え、なに?」
その光景は、部室に帰ってきた三上さんには、少し不思議に見えたようだった。
◆◆◆
部室の大掃除を終え、午後1時に帰宅したら、今度は自室の掃除が待っていた。
掃除機をかけたり、去年の教科書とかを捨てたり。『殻』を隠さなくちゃいけないから、あまり配置は変えない。
「……え?」
1時間ほどで掃除に飽きて、『殻』──ショートワンピースを着ようとして手に取り、気付く。
ショートワンピ、小さくなっていた。いや、これは──
「僕が大きくなった──?」
衝撃。
小学生以降、ほとんど身長は伸びていなかったから、勘違いかと思ったけど。
「……明らかに小さいよね、これ」
ショートワンピを身体に当ててみて、ようやく事態を呑み込めた。
僕、身長伸びてるよね。
「────」
ショック。とにかくショック。
僕はずっと、このままの身長で生きていけると思っていたから。
この服どうしよう……もう着れないなら、捨てるべきだよね。見つかる前に処分しないと。
──そこまで考えて、ふと違和感を覚えた。
「……あれ?」
僕の持ってるショートワンピの色、こんなに濃かったっけ?
もう少し薄いピンク色だったような。──と。
『お兄ちゃん、いるー?』
「真菜? いるよー」
ショートワンピをササッと畳んで、積まれているTシャツと長袖の間に入れる。
「お邪魔するねー、ねぇ、あたしの服──ワンピがなかったんだけど、お兄ちゃんの洗濯物の中に紛れてたりしない?」
「あ! ……うん、探してみる」
あの服、やっぱり僕のじゃなかったんだ。──よかった。
自然な口調と動きで、積まれている僕の服からショートワンピを取り出して、真菜に渡す。
「確認してなかったから、分からなかったよ。ごめんね」
「いいよー。お兄ちゃんの服の中なら、全然気にしないから! ……お父さんの服の中だったら、すっごく嫌だけど」
「あ、あはは……」
真菜も順調に、反抗期に入っているみたい。良いことなのかは分からないけど。
「じゃ、お邪魔しましたー!」
「はいはい」
いつもの元気なあいさつで、真菜は部屋を出ていった。
──洗濯物の中に『殻』が混じってたら、おかしいよね。
冷静に考えてみたら、すぐに分かったことだった。
その後、1時間ほど続けて、今日の掃除は終了。
明日は窓ふきをしよう。




