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夢見少年物語  作者: イノタックス
5章 文化祭

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28話 体育館での再会

お化け屋敷を見終え、携帯で時間を確認。午後1時になるところだった。

文学部の部室に行かないといけないので、月夜野君とは2階で別れて、1階へ下りる。

その途中で、クラスの出し物(カフェ)の担当を終えた三上さんと合流し、部室へ。


「お、来たね。もう準備に入ってもいいかい?」

「はい、大丈夫です!」


安喰先輩の問いに、元気に答える。

三上さんの『はい!』という答えも聞き、安喰先輩は僕たちに指示を出し始める。

陽の光が当たらないように置いていた本を折り畳みの木のテーブルに移したり、部室前の廊下に『文学部、文芸誌配布中です』という看板を立てたり。

昼間でも薄暗い廊下に立てるから、見つけてもらえるか不安だったけど……部長に指示された場所に置いたら、蛍光灯からの光の加減で、看板は綺麗に見えるようになった。さすが部長。


「よーし、それじゃ……開場するわよ!」


部長の一言で、文学部の文化祭が始まった。


◆◆◆


「テニス部でーす! 飲み物はいかがですかー!」 

「鉄道研究同好会です! 写真と模型の展示会やってます! ぜひ来てください!」


色んな部活や同好会の1年生が、文化祭にやってきたお客さんに呼びかけをしている。

僕も負けてられない。いつもは大きな声は出していないけど、頑張れば出せるはず。

ダンボールで作った、『文学部、文芸誌を配ってます』と書かれたプラカードを掲げて、呼びかける。


「文学部です! 文学部部室で、部員が書いた文芸誌を配っています! ぜひお越しくださーい!」


──あれ、なんで僕、こんなにスムーズに大きな声出せたんだろう。

多少の(どこから出てきたのか分からない)自信はあったけど、一体なんで?


「……あ」


思い出した。30分くらい前に、大きな声を出していたのを。

大きな声と言うか、悲鳴だけど。まさか、あれがいい影響になったとは。

人生、何が起こるか分からないな、なんてオーバーに考えていると。


「すみません、文学部の部室ってどこにありますか?」

「あ、そちらの南校舎の1階の、一番奥です」

「ありがとうございますー!」


中学生っぽい女子二人組が、訊いてきてくれた。

よかった、誰も来ないってことはなさそう。


「すみませーん、文学部の部室ってどこッスか?」

「そちらの南校舎の──」

「私たちも行きたいのですが、どちらでしょうか」

「あ、ではご案内しますね!」


あれ、文学部ってもしかして、人気だったりする?

男子中学生三人組とご年配のご夫婦を、部室まで案内する。


◆◆◆


「今日の分終了だね。お疲れさま、二人とも」

「おつかれ~、二人とも~」

「お疲れさまでした!」

「お疲れさまでした……ふぅ」


今日の分として用意した文芸誌を大体配り終えたので、文学部の文化祭、1日目は終了。

僕と交代で、外でプラカードを掲げていた三上さん、眼鏡を外して目をぱちぱちしている。少し疲れているみたい。

時刻は午後2時半。この後三上さんと軽音楽部のステージを見るつもりだったけど、無理はさせられないな。


「三上さん、少し休んでいたら?」


三上さんが疲れていると気付いてくれたようで、安喰先輩がそう言ってくれた。


「でも、軽音楽部のステージが……」

「高波さんの出番は3時頃だし、少し休んでいなよ。無理しない方がいいよ」

「うぅ……そうする」


僕もフォローしておく。日差し強かったし、軽い日射病なのかも。

僕も残ろうかと思ったけど、それはそれで三上さんに負担をかけちゃうかもしれないから、僕は一足先に体育館へと向かった。


◆◆◆


「おぉ……」


知らず知らず、感嘆の声が口から漏れていた。

ステージの上では、ギターボーカルともう一人のギター、ベース、ドラム──という構成のガールズバンドが、激しめの曲を演奏していた。

軽音楽部の2年生のバンドらしい。1、2歳しか離れていないはずなのに、すごく大人っぽい。かっこいいなぁ……!


「おや、君は……」


ステージの上で激しく演奏する女子生徒に見とれていると、僕の左横に誰かが立ち、声をかけてきた。

びっくりして、すごい勢いで顔を左に向け、その人の顔を見る。

大柄の、どこかで見たことのある男性。あれ、もしかして……


「五十嵐さん!」


以前楽器屋で会ったことのある、五十嵐浩一郎さんだった。

印象深かったから、ちゃんと憶えていた。


「お、よく憶えていたね! そういう君は連宮君、で合ってるよね?」

「はい! あ、そっか。五十嵐さんって、この学校のOBなんですよね」


だから、文化祭を見に来たのか。


「一応、用事があって来たんだけどな。よく考えたらその用事、明日だったよ。はっはっは!」

「そ、そうなんですか」


演奏を邪魔しない程度の声で豪快に笑う、ハワイアンな柄の半袖シャツを着た五十嵐さん。下は七分丈のチノパンを履いている。大柄だからか、すごく似合っている。


「じゃ、俺は先生たちと会ってくるよ。また明日!」

「え、あ、はい、また明日……です」


最後のあいさつの意味がよく分からなかったけど、多分なんとなく発せられたものだろう。気にせずにあいさつを返して、僕は再びステージを見る。

ちょうどガールズバンドの演奏が終わったところで、ギターとベースを片付けて、また違うギターとかを置いていた。


「連宮君、お待たせ」


ドラムはそのままなんだな、と考えていると、またしても僕の左横から声をかけられた。

声の主は三上さん。顔色はかなり良くなっていた。


「もう大丈夫なの?」

「ああ、完全に回復したよ。高波さんは──あ、いた!」

「あ、本当だ」


ドラムセットの奥に座り、位置を調整している高波さんを見つけた。

1分ほどして、高波さんのカウントで曲が始まる。

今回もフォーピースバンド。ギターボーカルとベースが男子で、もう一人のギターは女子だった。


「す、すごい……」


また、感嘆の声が漏れていた。

ボーカルやほかの楽器に負けないくらいに、パワフルなドラム。かと思えば、次の曲では繊細なタッチに変わる。

すごい、本当に高波さん、ドラム上手なんだな。信じてなかったわけじゃないけど、まさかここまでとは。

3曲演奏し終え、高波さんはスティックを持ち、ステージの左側(下手(しもて)って言うんだっけ)に入っていった。


「……すごかったね、高波さんの演奏」

「うん、本当に──すごかった」


僕の問いに、心ここに在らず、といった様子の三上さんが答える。

いつまでもこの余韻に浸っていたいけど、そうはいかない。


「教室に戻ろっか、三上さん」

「……ああ、もうこんな時間なんだね。うん、戻ろう」


高波さんの演奏について語り合いながら、僕と三上さんは体育館を後にした。


これで、文化祭1日目は終了。

2日目──明日も楽しみだ。

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