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夢見少年物語  作者: イノタックス
幕間 夏休み明けの出来事

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25/81

25話 進むために

「よっ、連宮」

「連宮君、おはよう」

「……う、うん、おはよう」


今の自分にできる精一杯の笑顔で、根原君と月夜野君にあいさつを返す。

今の時刻、午前8時。場所は、学校。

──結局、僕は学校に来ることにした。

通学路であいつに待ち伏せされていないか不安だったけど、そういうことは一切なかった。


(……大丈夫かな)


根原君はいつも通りの笑顔で僕にあいさつしてくれた。

だから多分大丈夫だとは思うけど、僕が来る前に月夜野君と話していたみたいだし、気になる。

僕が泣いちゃったことを知ったら、根原君は僕のことを嫌いになるかもしれない。

月夜野君だって、内心僕のことをどう思っているのか。


「おはよう、連宮君」

「っ……おはよう、三上さん」


後ろから声をかけてきたのは、三上さん。

三上さんにも『道端で泣いた』なんてこと、知られたら、きっと──


「どうしたの、連宮君?」

「え、な、何が?」

「いや、いつもと雰囲気違う気が」

「ち、違わないよ。いつも通りだよ」


ギリギリの心を隠して、笑顔で答える。


「そう? ……ま、いいや。そうだ、今日からまた部活始まるでしょ? 今度は何をやるのかなー、楽しみだね!」

「そ、そうだね、楽しみだね」


なんとか答えを返して、僕は『トイレに行ってくるね』と嘘を吐き、早歩きで教室から出た。


◆◆◆


「よし、今日はこれまで。お疲れ様、二人とも」

「お疲れさまでしたー!」

「……お疲れさまでした」


部活が終わり、部室の外が暗くなり始めた。

急いで帰らないと。


「連宮君、一緒に帰──」

「よ……用事があるから、先に帰るね!」

「え、う、うん……」


誘ってくれた三上さんには悪いけど、もし昨日みたいにあいつが帰り道にいたら──三上さんにまで迷惑が掛かってしまう。それは絶対に避けなければ。


部室を出て、生徒用玄関で急いで靴を履き、外に飛び出る。

早く、早く帰らないと──


「お、連宮! 今帰りか──」

「ま、また明日!」

「──……あ、ああ」


部活終わりらしい月夜野君の横を走り抜けて、僕は家へと急いだ。



「連宮君、どうしたのかな……」


今日の連宮君、どこか変だった。

いつもみたいに自分たちと話していたけど、連宮君から話題を振ってはこなかった。

まるで、自分たちを避けているかのように。気のせいならいいんだけど……。


「あ、三上!」

「月夜野君……? ……なんで校門の外に寄りかかってたの?」

「お前を待ってたんだ」

「……え?」


……まさか告白? いや、正直困るんだけど。

まだ恋愛とか分からないし、そもそも自分男だし。男の人同士の恋愛が嫌ってわけじゃないけど、向こうが自分のことを女だと思っているのが、なんかなぁ。


「──おかしな想像してないか?」

「当たってほしくない予想ならしてるけど」

「じゃあ安心しろ、その予想は外れてるから。──連宮のことだ」

「連宮君? もう帰ったと思うけど……連宮君の様子がおかしかった理由、知ってたりするの?」


軽い気持ちで訊いたのだけど、帰ってきた言葉にはかなり、真剣みが含まれていた。


「連宮の奴、昨日──泣いたんだ」



「連宮君!」

「み、三上さん?」


駅を少し過ぎたところで、後ろから三上さんに声をかけられた。

息を切らしている。僕を追いかけて走ってきたのかな。でも一体、なんで──


「昨日、泣いたって聞いた。何があった」

「……っ!」


なんで三上さんが、昨日のことを──。

まさか、月夜野君から聞いたのかな。一体、何を言ったんだろう……。


「ねぇ、それ、誰から聞い──」

「そんなこと、どうだっていいだろ!」

「ひっ……」


三上さん、なぜか怒ってる。え、本当になんで?


「何かあったんだろ、嫌なことが。なのになんで──なんで相談してくれなかったの!? 自分たちは友達でしょ? そう思ってたのは自分だけだったの!?」

「ち、違う……! 友達だから、迷惑かけちゃったら」

「離れられる、って思ったの?」

「……」


思った。

離れられるって、思った。


「……あのね、連宮君?」


怒りのこもった声から一転、三上さんは優しく、僕に語りかけてくる。


「何があっても、自分たちは友達だ。自分が連宮君のこと、嫌いになるわけないだろ?」

「……っ、三上、さん……」

「大丈夫、ずっと連宮君の味方だから。だから、安心して」

「うん……!」


泣きそうになった顔を見せたくなくて、必死に堪えて。

だけど、僕はまた──泣いてしまった。

昨日とは違う、暖かな気持ちで。



結局、三上さんには昨日のことは話さなかった。

聞いたらきっと三上さんは、一緒に僕の家まで来てくれただろう。

でも、それはダメ。


これは、僕が解決しなくちゃいけないことなんだ。


「あれ~、またここを通ったんだねぇ、つ・れ・み・や・くぅん?」

「……っ」


昨日と同じベンチに、足を組んで座っている、僕の『元』同級生。──『たち』。

同級生4人組が、僕を見てにやついている。

きっと、いい『遊び道具』が手に入ったと思っているんだろう。

こんな奴らに、僕の小学校生活を滅茶苦茶にされたのか。


──あ、なんかムカついてきた。


「つれみやくぅん、君の家、教えてよ~毎日行ってあげるからさぁ~」

「前みたいに、物を隠してお前が探す遊び、しようぜぇ?」

「なぁ、つれみや~……おいてめぇ、俺らの話、聞いてんの?」


ムカついた影響かな、逆にどんどん冷静に、目の前の4人組の顔を見れてきた。

こんな奴らに、こんな奴らに──。


「おい、聞いてんのか──」

「僕、は」

「あん? あれぇ、もしかしてまだ『ぼく』とか言ってんの~? うわ、キモくね~?」

「キモいー! キモすぎー!」


ぎゃっはっは、と下品な笑い声を夕方の住宅街に響かせる4人組。

僕も負けじと、はっきりと伝える。


「──僕はもう、お前たちなんかに屈しないから」

「えっ……」


あはは、4人ともすごく情けない顔してる。飼い犬に逃げられた飼い主みたいな、そんな表情。


「じゃ、僕はもう行くから。──僕の前に、二度と姿を見せるなよ」


呆然とする4人を残し、僕は意気揚々と家へと走っていった。

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