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夢見少年物語  作者: イノタックス
4章 夏休み

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21/81

21話 僕の場合は

「ねえ佳奈美」

「ん、なに?」


ショッピングセンターからの帰り、高波さんのお父さんが運転する車にて。

高波さんのお母さんが、何かを思い出したように、助手席から後ろを振り向き高波さんに話しかけた。


「あの話、三上さんにしたの?」

「もちろん! ……あ、つれみーにはしてなかったね」

「へ?」


『あの話』──何のことだろう?


「夏休みのどこかで、4人で遊ぼうと思って!」

「4人──ってことは、あと一人は」

「もちろん、ねはらっちだよ!」


ああ、やっぱり。

根原君もいてくれた方が楽しいから、よかった。


「私の家で遊ぼうと思うんだけど、どう?」

「……うん、いいと思うよ!」


高波さんの家、か。

僕の事情を知っている三上さんの家の方がよかったけど、仕方ないかな。


「佳奈美、根原君は連宮君たちのことを知っているのかい?」

「うん、心配いらないよ」

「そうか、それならよかった」


──やっぱり、これって。

気になるから、小声で訊いてみる。


「ねえ、高波さん」

「なに?」

「高波さんのお父さんとお母さんって、僕や三上さんの内面のこと、知ってるの?」

「うん、だから心配しないでうちに遊びに来てね」


高波さんも、小声で返してくれた。


「大事な友達のことだから、話しておきたかったの。勝手に話したこと、怒ってる?」

「まさか。そう思っててくれて、嬉しいよ」


少し照れ気味に、そう返した。


「なあ佳奈美、連宮君の家ってここを曲がればいいんだっけ?」

「そうだよー。つれみー、後で空いてる日を教えてね!」

「うん、部長に確認してみる。……今日はありがとね、高波さん」

「気にしないでよ。友達でしょ?」


そんなことを、すんなりと言う高波さん。

やっぱり、高波さんは凄い。

改めて、そう思った。


◆◆◆


夕飯を食べ終え、お風呂にも入り終えた、午後11時。

僕は自分の部屋のベッドに腰かけて、買ってきたCDをイヤホンで聴きながら、少し考え事をしていた。


「高波家は、理解してくれているみたい。三上さんの両親も、理解するための努力はしている」


昼間のことを、思い出しながら。


「……じゃあ、僕の場合は?」


僕の両親は、僕のような──性別で悩んでいる人のことを、知っているのだろうか。

一応、差別的な発言をしていたことはない、と思う。

だけど。


「高波さんや根原君は、例外だろうし」


小学校で僕の秘密を知った人は『例外なく』僕のことをいじめてきた。

先生も、僕を庇おうとはしなかった。

男子には笑われ、女子には気持ち悪がられ、担任の先生には煙たがられていた。


そんなものなのだと思っていた矢先に、三上さんたちが現れたのだ。


「……あまり考えすぎてもいけないかな」


イヤホンを外し、電気を消して、ベッドに寝転ぶ。


「部活は……明後日からか」


明日も休み。

明日は何をしよう。

そう思いながら、僕は目を閉じた。

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