15話 中央病院へ
翌日、金曜日。
「……ふわぁ」
ゴールデンウィーク初日。
一晩寝ても、気分は優れないまま。
枕元のスマホで、時間を確認する。
「7時、か」
三上さんたちとの約束の時間は、10時。
まだ、だいぶ時間がある。
「……起きよう」
寝ていても、気分は優れない。
起きて、宿題でもしていよう。
◆◆◆
「ごちそうさま」
母さんと2人で朝ごはんを食べ、食器を片付け、廊下へと出るためにドアを開けると。
「おお、おはよう奏太」
「おはよう、お父さん」
起きてきたお父さんが、そこにいた。
「休日なのに、今日は早いね。部活に行くのか?」
「ううん、部活は休みだから、友達のお見舞いに」
「お見舞い?」
──お父さんたちには、根原君の容体に関する情報は行っていないみたいだ。
「入院した友達がいるんだよ」
「そうなのか……病気か?」
「多分そう。詳しいことは僕も知らないから、今日聞いてこようと思って」
「なるほどな。元気だといいな」
そうだね、と返して、僕は部屋へと戻るため、階段を上っていった。
◆◆◆
「お! つれみー来たね!」
「おはよう、高波さん、三上さん。もしかして、遅れちゃった?」
「いや、まだ集合時間5分前だよ。自分は高波さんに呼び出されたから、15分前に来ちゃってたけど」
「呼び出されたの?」
一体、なんで?
「暇だったから!」
「随分シンプルな理由で……」
さすが高波さん、といったところか。
「それじゃ、出発しようか。中央病院だから、歩きでいい?」
「うん、大丈夫だよ」
ここから15分ほど、駅とは反対方向に歩いたところにある、中央病院。
風邪を引いたときとかに、何度かお世話になったことがある。
割と大きめの病院だ。
「よし、しゅっぱーつ!」
高波さんの合図で、僕らは中央病院へと歩き出した。
◆◆◆
「そう言えば、つれみー」
「ん、なに?」
歩き始めて5分ほど経った頃、高波さんが僕に訊いてきた。
「昨日のこと、お父さんたちにはバレなかった?」
「うん、バレなかったみたい」
「……つれみーは、隠したままで辛くないの?」
──的確に、痛いところを突いてきた。
「本当は三上さんみたいに、隠さずに、正直になったほうがいいんだろうけど……まだ早いかな、って思っちゃって」
「なるほど。その感覚は分からないけど、つれみーにはつれみーのタイミングがあるだろうからねぇ。気長に頑張れば、いっか!」
「うん、そう思うよ」
思ってる。
思ってはいるのだけど、やっぱり不安だ。
この先、僕は両親と妹に、僕のことをちゃんと話せるのだろうか。
「連宮君なら、きっといつか、話せると思うよ」
「え……」
僕の気持ちを知ってか知らずか、三上さんが、そんなことを言ってくれた。
「連宮君は自分の親を説得してくれた、だから、って言うのも変だけど……連宮君が話すときには、自分も力になるよ」
「──あ、ありがとう」
とても頼りになる。
「お、見えてきたね」
住宅街を抜けると、中央病院が姿を現した。
◆◆◆
受付で『根原悟君のお見舞いに来たのですが』と言ったら、すんなり通してくれた。
既に面会の時間にはなっていたので、僕らはエレベーターに乗って、5階へ向かう。
「案外スムーズに来れたね」
「だねー。もっとややこしい手続きとか、あるんだと思ってたよ。指紋認証! ……みたいな」
「高波さん、どんなSFの病院を想像してるの……?」
度々思うけど、不思議な思考回路してるよね、高波さん。
「根原君、元気かな……」
「もう少しで分かるから、そんな暗い顔しないの。担任の話じゃあ、容体は安定してるみたいだし、大丈夫じゃない?」
「だといいんだけどね……」
不安なものは不安なのだ。
◆◆◆
5階に到着し、根原君が入院している512号室へ着き、扉をノックする。
中から『はーい』と低い声。根原君ではないようだけど……?
「失礼します」
ドアを開けて、入る。
「えっと、どちら様、かな?」
「根原君のクラスメートの、連宮です」
「ああ、クラスの子だったか」
すごく納得している様子。
「同じく、三上です」
「高波ですー」
「おや、3人も来てくれたんだね。ありがとう、息子のために」
──ああ、根原君のお父さんだったか。
「いえ、友達ですから、当然です」
根原君は、僕の大切な友達だ。
お見舞いに来るのも、当たり前だろう。
「──へえ、悟に友達、か」
「……?」
根原君のお父さん、随分と驚いている。
理由を訊こうとしたところで、ようやく思い出した。
──根原君にとっては、僕が初めての友達だったんだ。
「はい、友達です」
だから、ここはしっかりと言っておかなければいけないだろう。
僕は、根原君の友達なのだから。
「……えっと、連宮君、どういうこと? 随分驚いているようだけど」
「友達だってことだけで、そんなに驚かなくてもいいと思うよねぇ」
案の定、2人とも疑問を抱えていた。
こういう事態だし、教えても大丈夫だよね。
この2人なら、変な噂が立つこともないだろうし。
「僕が友達になるまで、根原君、友達がいなかったらしいよ」
「……」
「……え?」
こちらも、案の定。
三上さんはそうでもないが、高波さんは──相当驚いていた。




