表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見少年物語  作者: イノタックス
3章 根原家の事情

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/81

14話 殻をまとって

翌週、月曜日。


「根原君、大丈夫かな……」


根原君は、体調不良で学校を休んだ。


◆◆◆


根原君の体調不良は、4日間も続いた。

今日はゴールデンウィーク前日の木曜日。

心配だ。あの根原君が、体調を崩すなんて──。


「ホームルームを始めるぞー、席に着けー」


先生が教室に入ってきた。

朝のホームルームが始まる。いつまでも、こんなに暗く考えていてはダメだ。


「よし、始めるぞ。──と、その前に……今朝、学校に電話がかかってきてな」


……学校に?

何かあったのかな。


「根原の母親からだったんだが、根原、入院したらしい」


────え?


◆◆◆


その夜。

僕は、酷く混乱していた。


先生からの話によると、根原君は、相当疲労しているらしい。

土曜日から寝込んでいて、どんどん体調が悪化して、水曜日に入院、ということだったらしい。


初めての友達が、入院したのだ。

当たり前だけど、そんなこと、今まで1回もなかった。

僕の精神が、そんな事実に耐えきれるわけがなかったんだ。


だから、僕はまた、殻をまとって。



──殻に閉じこもらずに、外に出た。



◆◆◆


「それで、(うち)まで来た、ってわけか」

「う、うん」


外に出たはいいけど、どこに行けばいいのか分からず、とりあえず友達の家に、ということで──三上さんの家まで来た。

ほとんど無意識の行動だったけど、街中に行く、とかの選択肢よりはマシなものを選べたと思う。


「電話で、自分の家の前にいる、って聞いたときはどういうことか分からなかったけど……そう言う理由なら、仕方ないかもね」

「ごめんね、迷惑かけちゃって……」

「いいって、父さんと母さんはもう寝てるんだし」


やっぱり、チャイムを押さなくて正解だったんだ。


「連宮君の両親にはバレなかったの?」

「うん、両親はもう寝てたし、妹はお泊り会で出かけてるから」

「あ、妹さんいるんだ」

「うん」


そう言えば、妹のことは言っていなかった。


「──ねぇ、連宮君、今思ったんだけど……」

「ん、何を?」

「その格好で、ここまで歩いてきたんだよね」


殻を──女物の服を身にまとって、三上さんの家まで歩いてきた。


「不審者とかいるだろうし、気を付けたほうがいいよ……」

「そ、そうかな」


三上さん、少し呆れている。

こんな僕でも、狙われるのだろうか。


「連宮君のその身長と、その髪の長さ、それにそのスカート……のシルエットは、パッと見ただけじゃ、ちょっと身長が高い、ボーイッシュな女子にしか見えないんだから」

「そ、そう……?」


注意されているんだろうけど、なんか、ちょっと嬉しい。


「……それにしても、違和感ないね、スカート」

「そ、そうかな……似合ってる?」

「似合ってるというか、着こなしてる感じが凄い」


褒められている……んだよね、多分。


「ねえ連宮君、高波さんを呼んでもいい?」

「いいけど、どうして?」

「女子同士の方が、よさそうかな、と思って」

「……なるほど」


言われて思い出したけど、僕と三上さんは、異性なんだった。

身体的にも、精神的にも。

──これだけの言葉だと、一般的な『異性』のように思える。


「もう遅いし、来るか分からないけど……」


そう言って、三上さんは高波さんに電話をかけた。


◆◆◆


「遅いのに、ありがとね」

「気にするでない、我はそなたと共にあり!」

「何キャラなの、それ……?」


電話の後、数分で高波さんは三上さんの家に来た。

やけにテンションが高い。

三上さんのベッドに座った高波さんに、なんでなのか訊いてみると。


「そりゃ高くもなるよ! だって、その姿のつれみーを見れたんだから!」

「見れて嬉しいものじゃないと思うけど……」

「嬉しいよ! 普段スカートを穿かない娘がスカートを穿いた姿とか、珍しくて素敵じゃない?」

「う、うん」


珍しいイコール素敵、という理論がよく分からないけど、とりあえず頷いておく。


「でも、僕の身体は男だよ?」

「こらこら、友達の家まで来ておいて、そんなことは言っちゃダメだよつれみー。ちゃんとすね毛は剃ってるみたいだし、とっても似合ってるよ」

「あ、ありがと……」


真剣みの混じった笑顔で、高波さんは言う。

本心からの言葉だろうし、素直に喜んでおこう。


「それで、つれみーは根原君が入院したから、こうしてみかみんの家まで来ちゃったわけでしょ?」

「そう……だよ」


言葉にして聞くと、僕の精神、ずいぶん弱いように感じる。

実際その通りなんだけど。


「根原君のことが、心配だと」

「う、うん」

「なら、話は早いね」


ベッドから立ち上がり、高波さんは提案する。


「明日、根原君のお見舞いに行こう!」

「あ、明日?」


随分急な……。


「こういうのは、早い方がいいよ!」

「高波さんの言うとおりだよ。どんな状態か分からないんだし、早めに行った方が確かだと思う」

「そう……だね。うん、分かった、明日行こう」

「よし、決まりだね! それじゃ、今日はもう帰ろう!」


──え、もう?


「明るい時間にその格好で外を歩くのは、つれみーや私たちは気にしないけど、他の人たちは気にしちゃうと思うし。何より、お父さんたちにはバレたくないんでしょ?」

「うん、今はまだ……」

「なら、これも早い方がいいよ。つれみーのお父さんたちが寝ている間に、帰ろう!」

「うん、そうするよ」


高波さん、色々考えてくれている。


◆◆◆


「高波さん、今日はありがとね」


玄関のドアを開けて、三上さんの家を出ようとしていた高波さんに、お礼を言う。


「お礼を言われることなんてしてないよ。友達として、友達を手助けしようとしただけだよ」

「……高波さんは、すごいね」


『そんなことはないよ』と言って手を振り、高波さんは家を出た。


「三上さんも、急に来ちゃったのに、ありがとね」

「気にしなくていいよ。困ったときはお互い様、だよ」

「うん! それじゃ、また明日」

「また明日、連宮君」


玄関を出て、僕も家に帰る。


やっぱり、三上さん、いい人だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ