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夢見少年物語  作者: イノタックス
2章 文学部

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10話 文学部、開始

翌週、月曜日。


「失礼します」


その放課後。

僕と三上さんは、文学部の部室へ来ていた。


「おお、ちゃんと来てくれた!」

「ど、どうかしたんですか?」


安喰先輩、飛び上がって喜んでいる。

本当、どうしたのだろうか。


「入部してくれたのは聞いていたけど、本当に来てくれるか、若干不安だったんだよ! 来てくれて嬉しいよ!」

「あ、ああ、そういうことですか」


そんなに喜ぶってことは、他の1年生は入らなかったのか。


「だから言っただろう、安喰君。連宮君と三上さんは、必ずこの部に入ってくれる、と」

「それでも不安だったんですよぉ。いやぁ、よかった。これで文学部は廃部にならずに済んだ!」

「あはは……」


一応、僕たちのおかげで廃部にならずに済んだ、ってことなのか。


「……最初は、文学部なんてどうでもよかったくせに……」

「……?」


大切なものを見るかのような、とても優しい表情で、部長は安喰先輩にそう言った。

『さて、小説の続きを書くか!』と張り切っている安喰先輩には聞こえていないようだけど──『文学部なんてどうでもよかった』って、どういうこと……?


「……さて、それじゃあ早速だけど、君たちに課題を出そう」

「課題、ですか」

「ええ、宿題じゃないわ。課題だから、今やってもらうのよ。何、簡単な課題よ。いきなり『短編を書け』なんて言ったりしないから、安心してね」


ゆくゆくは、短編を書かされるのだろうか。

物語を妄想するのは嫌いじゃないし、別に構わないけど。


「あ、部長、ずるいっすよ! 俺の時は『1時間ドローイングもとい、1時間ライティングをしなさい』なんて言われたのに!」

「時代は移り変わるのだよ、安喰君」

「たった1年間ですよぉ!?」


そ、そんなことをさせられたのか。


「それって、前の部長に言われたんですか?」


『1時間ライティング』の件が気になったらしく、三上さんが訊く。


「いや、あたしが指示した」

「え? でも、去年の部長は……」

「ああ、権限はあたしが持っていたからね。前の部長は、小説を書くことにしか興味がなかったから。同学年がいなかったから部長をやっていたみたいだけど、嫌でしょうがなかったみたいで、権限を譲渡されたの」

「譲渡、ですか……」


凄い人だな、前の部長。


「話を戻すわね。さっき言った『課題』のことだけど。──君たちには、『自分自身について』書いてもらいたいのよ」

「えっ……」


一番書きたくないことなんだけど……。


「この紙に書いてね。時間は──そうねぇ、10分くらいにしようか」


そう言って、部長が僕と三上さんに、A4の紙を渡す。


「み、短くないですか?」


制限時間の短さに、三上さんが反応した。

僕も三上さんと同じことを思っている。


「長く書いてもらいたいわけじゃないからね。短く、簡潔に書いてもらえれば、それでいい。それじゃ、早速書き始めてね」

「は、はい!」


用意されていた長机に座り、僕と三上さんは、脚色だらけの『自分自身について』を書き始めた。


◆◆◆


翌日、火曜日。

あたしは、連宮君と三上さんが来る前に、昨日書いてもらった『自分自身について』を読んでいた。


「『ずっと友達がいなかった』『小学校ではいじめられていた』ねぇ」


読み終えて──聞き終えてどう感じたか、安喰君を見てみると。


「彼ら、苦労してきたんですね……」

「……本当に、安喰君は単純だね」

「へ?」


自己紹介文の書かれた2枚の紙を、安喰君に渡す。

何度も目を通す安喰君。今の彼じゃ、深くまでは分からないだろうけど、あえて黙っておこう。

その方が、面白そうだし。


「あたしは『自分のことを書きなさい』って言ったんだけどねぇ」

「別に、矛盾はなさそうですよ?」

「矛盾は、ね。でも──」


『脚色はどうだろう』と言いそうになってしまった。危ない危ない。

脚色のほかにも、おかしな点はいくつかあるけどね。

友達がいなかったことと、いじめられていたことの『理由』が書かれていないのだ。


「まあ、何にせよ。──こんなものであたしが騙されると、本気で思っているのかねぇ」

「……え、なんで怒ってるんですか?」

「怒っちゃいないよ、楽しみなのさ。彼らの内側は少し複雑だから、まだ話せないのかもね。ま、追い追い、だね」

「……?」


相変わらず理解できていない様子の安喰君。

そんな安喰君も面白いよ、なんて言うと──『勘違い』しそうだし、言わないでおく。


「失礼します」

「お、連宮君、三上さん」


扉が開き、1年生2人が入ってきたので、安喰君から2枚の紙を受け取り、笑顔で迎える。


「いらっしゃい。それじゃ、今日は──」

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