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桜の舞う頃に  作者: 銀命
一年 三学期
51/79

卒業式

三月


今日は今年度最後の登校日だ。

つまりは、卒業式。

部長さんが僕たちの先輩でなくなる日。

あぁいや、部長さんじゃなく宮野先輩だった。



先週、合唱コンの後のひと騒動のあと。

僕と宮野先輩は一緒に帰った。

宮野先輩はこれまでは普通に接していたのにあんな事があったせいだろうか。顔を見るのも恥ずかしいらしく、ひたすら斜め下を見ていた。

いや、よくよく思えば今までも普通では無かったのかもしれない。

部室に入る度に変な事を言っていたのも注目させる為だと前に言っていたが、別にそんなことする必要は無かった訳だし。

ただ注目!などと言えば皆注目しただろう。

つまりは僕とのやり取りを楽しんでいたのだろう。

或いは僕に注目して欲しかったとか。

なんかこんなこと考えてたら僕まで恥ずかしくなってきた。

というかこれは流石に考えすぎだろう。

自意識過剰にも程がある。

冷静に、冷静に。


「あの、部長さん。」「あのだな、カズ。」


被った。


「お先にどうぞ。」

「え。あ、うん。悪いな、カズ。別に大した事じゃないんだが、出来れば部長さんは止めて貰えないか。さっきも言ったがもう私は部長じゃ無いし、それに何か距離を置かれてるみたいで嫌だし...」


徐々に語尾が小さくなっていく。

こうして見ると、改めて宮野先輩は女子なのだなと思う。

江藤さん一筋のこの僕でも、ふとした動作にドキッとしてしまう。

まさかそんな日が来るとは。

江藤さんへの思いに揺るぎは無いけど。

でも宮野先輩に悪いことしたな、とは思う。


「分かりました。宮野先輩。では、宮野先輩は何処の高校へ行くんですか?文化祭などの際には皆で行きたいのですが・・・だめですか?」


僕としては高校生となった宮野先輩を見てみたいと思うのだが、先輩としてはどうなのだろうか。

もしかすると今一緒に帰っている事すら不快に思っているかも知れない。


「いや、別に良いぞ。私もちょくちょく中学の方に顔を出すつもりだしな。私が行くのは...」


宮野先輩が言った高校は国内でもなかなか有名な私立高校だった。

頭が良いとは思ってたけどまさかここまでとは。

やはり先輩には驚かされるばかりだ。


「それじゃあ、またな。」


いつの間にやら分かれ道に着いたようで、先輩とは別れた。



あれから一週間が経ったが、部活動もなくあまり宮野先輩とは会えていない。

元気にしているだろうか。

まあ先輩なら別に心配しなくても大丈夫か。

というか一週間経っても未だに宮野先輩というのは慣れない。

僕の中では完全に部長さんだからな。

そういう意味では副部長さんもそうだ。

あの人が次の部長になるのだろうが、部長さんと呼ぶのは違和感があるしな。

かといって副部長さんのままもどうかと思う。

あの人も名前で呼ぶか。

えっと、名前は...名前...

後で調べとこ。


そんな事を考えているうちに卒業式が始まった。

卒業生として三年生が入場してくる。

当然ながらその中には宮野先輩もいる。

その姿を見てようやく宮野先輩が卒業するのだな、と実感が湧いた。

何だかんだであの部活は宮野先輩がいてこその文芸部だった気がする。

そんな大事な人が居なくなってしまって大丈夫なのだろうか。

色々不安はある。

けれども今は素直に先輩の卒業を祝おうじゃないか。

先のことはその時に考えればいいさ。


卒業証書が渡された。

今になってようやく先輩が三組であった事を知った。

先輩が卒業証書を受けとる様子はとても凛々しくて、格好良くて、頼もしくて。

僕はあの人にもう会えない訳じゃ無いのに寂しくなって。

気がつけば頬に一筋の涙がつたっていた。

それからはあっという間で。

僕は思いっきり泣いていた。



卒業式が終わった。

三年生が写真を撮ったりして、解散となった。

とはいえ直ぐに帰る人はいない。

友達と、先生と、後輩と。思い思いの人と話をしている。

僕は宮野先輩の元へと向かう

一週間前とは違い、一応言うことは考えてはいる。

大雑把にだけど。


「宮野先輩。今までありがとうございました。」

「ああ。こちらこそな。それにしてもそんなに泣いてると可愛い顔が台無しだぞ。」


僕はまだ泣き止んでいなかった。

というか止まらない。

本当、こんな日が来るとは。

宮野先輩には驚かされるばかりだ。


「ほら、もう会えない訳じゃ無いんだから。とっとと泣き止む。」


先輩が声をかけてくれるがやはり止まらない。


「これからは私がいないんだから。もっとしっかりしないと。」


そこで一旦言葉を区切り、真面目な顔になる。

それを見て僕も背を伸ばす。

涙は止まらなくていまいち締まらなかったけど。


「今まで本当にありがとうな。文芸部は任せた。しっかりさゆりを支えてやるんだぞ。それじゃあまた、いつかな。」

「...はい。」



そう言って先輩は静かに立ち去っていった。

一年生編はこれにて終了です。

因みにカズが泣いたのは本人が覚えている限り初めてです。

それだけ影響の大きかった人なのです。

さて、次回からようやく二年生となります。

後輩集め、さゆりさんが部長となった新しい文芸部など色々ありますが最初はクラス替えですよね。やっぱり。

私も結構ドキドキしていました。

場合によっては話せる人が全くいなくなってしまうので。

それではまた次回。

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