クリスマス 中編
時刻は十二時ちょいすぎ。
僕らは一軒の食事処にいた。
それはもう、僕が一生入らないだろうと思われるほどの高級そうな店だった。
責任はあるとしたら僕か部長さんのどちらかだろう。
いいや、今回は誰も悪くない。不幸な偶然がたさなっただけだ。
ちょっと振り返ってみようじゃないか。
「よし、じゃあ次の場所へ行くぞ。」
「まだどこか行くんですか?」
「そりゃもちろん。せっかくのクリスマスなのにこんなに早くに解散するだなんてもったいないだろうが。」
「でもその前に昼食にしません?お腹すきました。」
僕らが部長さんに指定された集合時刻は昼食を取ってから来れるほど余裕のある時間ではなかった。ゆえに僕は今とてもお腹がすいている。ましてや運動までしたのだ。普段僕がしないほどハードな運動を。そう思っているのは僕だけなんだろうけどさ。
そうして僕らは昼食を取ることになったのだが、時間が時間だけにどの店も混んでいてなかなか入れない。そんなとき部長さんが言ったのだ。
「たしかこの辺でいつでも混んでいない店があったはずだぞ。そこへ行かないか?」
そう、この時点で気づくべきだったのだ。
だが僕が心配したのはいつでも混んでいないということから味がひどいんじゃないかということだけだった。
もしかしたら副部長さんなんかは気づいていたかもしれない。
だが結果として誰も何も言わなかった。
そうしてだんだんビル街になっていき、そして部長さんは一つのビルの中へと入っていった。
少しづつ不安になりつつもついて行くと、そこはいかにもといった日本料理店のようだった。
それはそれはとても入りづらそうな雰囲気だった。まさに一見さんお断りといった感じの所だった。
そんな中部長さんは一人ですたすたと入っていく。
僕はというと何となく場違いな気がして小さくなるしかなかった。不思議なことに他のメンバーは普通にしていた。なぜだ。
「おやおや、これは宮野さんの所のお嬢さんではないですか。今日はお友達とご一緒ですか。」
「おう、ちょっと急だったが大丈夫だろう。五人で頼む。」
「五人ですね。ではこちらへどうぞ。」
中から出て来たおじいさんが案内をしてくれた。部長さんの所の執事さんとオーラが似ていた。
この時点で僕は確信した。これは僕が入れるような店ではないと。
確かに部長さんはすいているとしか言わなかった。だがそれが高級だからと分からなかったのは僕の責任だろう。
「あ、あの。部長さん。ちょっと休養を思い出したので帰らせていただきます。」
「ん、なんだ。お腹がすいたと言ったのはカズだろう。金なら私が出すから食べてけ。」
「そんなわけには...って首をつかまないで下さいよ。」
首をつかまれ無理矢理連れて行かれてしまった。
ほんと、こんな店では料金のほうが気になって味わえない気しかしない。幸いにもほかにお客さんはいなかったからまだいいが、これでほかに居たらもうほんと怖くて二度とこの辺りには来れなくなりそうだ。
「あー。じゃあいつも通りでいいや。」
メニューを聞かれた部長さんはいかにも部長さんらしく答えた。
というかこんな受け答えでいいのか、とも思うが。家が相当らしいから許されているのだろうか。
おじいさんの方はまるで孫を見るかのような目で部長さんを見ている。おそらく大分小さいころから来ているのだろう。
それからしばらく。
部長さんは料理が楽しみ、といった感じでそわそわし。僕は緊張でそわそわし。残りのメンバーはいつも通りに本を読んで過ごした。だから何でこのメンバーは緊張とかしないの。羨ましい。きっと彼らはどんな大事を任されても顔色一つ変えずに成し遂げるんだろうな。
そうして十五分ほどたったころだろうか。
さっきのおじいさんがやってきた。
料理の説明をしながら次々と料理がやってくる。
ほんと、料金が怖すぎる。後で請求されたりしないだろうか。おそらく僕が一生かかっても返せる気がしない。
やだよ。無理矢理連れてこられた店で食べた料金のせいで一生が狂うだなんて。
だが味はとてもよかった。当たり前か。
お父さん、お母さん。僕はもう一生これ以上おいしいものに出会えないでしょう。ごめんなさい。
ちなみに部長さんはしっかりと味わっていた。
というか普段の姿を知らなければどこぞのお嬢様にしか見えなかった。
やはり普段が残念過ぎるということか。
ほんと、作者はいい店に入れる財力なんてないわけで。
当然そのあたりの描写は完全な想像です。違和感満載でしょうが気にしないでください。
登場人物が寡黙な人がほとんどで会話がほぼ部長さんとカズだけという現状。
来年はもっと活発な後輩を入れるか。
部長さんは今年で卒業だし。これで新一年まで静かだったらもう会話が無くなる。というかひたすら何もなく一年が過ぎる。
うん、そんなのは嫌だ。




