第6話~1年間の始まり その3~
遅れました。理由という名の言い訳はあとがきにて。
5/19修正:東エリア→西エリア
6/8修正:ギュスターヴ=エミール→ジャン=エミール
これに伴い、愛称「ジャン」
繁華街エリアを後にした俺とマルセラは、セントラルタワーから見て西のエリアである公共エリアへの向かっていた。
公共エリアは、その名の通り公共施設が連なっており、加えて居住区としても機能していた。マンション的なものから一戸建てまで様々な建物が軒を連ねている。
話は逸れるが、この世界には、飛行可能エリアというものがあり、公共エリアとセントラルタワー周辺は飛行不可能エリアである。更にいうと、セントラルタワー周辺は、強制的に魔法の使用が制限されているらしい。この国の中枢をなすセントラルタワーで魔法の使用が無制限では、色々問題があるのだろう。詳しい話は、編纂会議のときにでも聞こうと思っている。
さて、マルセラと公共エリアへと向かう中で、特に話題となったのが、中央議会と教育施設であった。この国は、「王国」と名乗っているものの、王の独裁ではない。基本的に議会制民主主義と同様であり、三権分立の枠外に「王」という臨時機関があると考えてもらえればわかりやすいか。例に違わず、先の謎の事件によって意思統一を図る必要があったらしく、その際に、魔科学に秀でたジョーウンの下、国の舵取りを任されることになったのだとか。俺の思っていた以上に、ジョーウンは優れた人間であるようだ。
つぎに、教育施設の話であるが、話題に挙がったのはマルセラの友人たちのことであった。彼女は、前にも触れたが、15歳で魔科学科を卒業したものの、基本的には魔科学科は18歳で卒業であるとのこと。彼女の同級生たちは、まだ魔科学科に席をおいている。今日は、この国では休日に当たるので、学校は休みであるのだが、マルセラが「魔科学科に行く」という話を仲の良い友人にしたところ、「せっかく来るんだから」ということで友人たちがお出迎えしてくれるそうである。国家公務員となったマルセラは、基本的に学校にいくことはない。ゆえに、同級生たちとは、休日がとれた日にたまに顔を合わせる程度で、ほとんど会う機会はなかった。そんな事情もあって、専門学校に行く話をしている間、マルセラはとても嬉しそうだった。
そんなことを話しながら、まず中央議会へとやってきた俺達であったが、現在緊急の事案が発生したとかで、とてもではないが、中を自由に見学などということは出来なかった。おそらく、俺の召喚が関わっているのであろう。
しかたがないので、周辺を見回してその場を後にする他なかった。
しばらく道なりに歩いていると、一際目立った建物が目に入った。マルセラいわく、これが教育専門学校だそうだ。セントラルタワー程ではないが、とにかくでかいので嫌でも目に入る。さすが、全専門科を束ねる教育機関、と言ったところか。ちなみに、今日見学しに行くのは、マルセラが在籍していた魔科学科のみである。さすがに、全専門科を見学するのは、今日の残りの時間では全くと言っていいほど足りない。丸一日使っても見学しきれないとのことだ。
どんどん視界を建物が支配していく中、建物の正面らしき場所には、人が3人ほど立っていた。
「マルセラー!」
元気な声が聞こえてくる。一人の人物が、全力で手を振っている姿が見える。おそらくマルセラの数少ない友人たちなのであろう。それにしては、身長がマルセラより・・・なんでもない。
「ルイズさん・・・!」
マルセラは、恥ずかしそうに俯いていた。おーいおーい、と未だに声が聞こえてくる。俯いてはいるものの、マルセラはなんだかんだで嬉しいのだろう。顔がにやけているのがわかる。しばらくしたら、諦めたようで、マルセラは手を振り返していた。
「マルセラー!久しぶりー!元気してた?元気してた?かわいい!」
「も、もう!やめてください!他の方々も見ているではありませんか・・・!」
ルイズという子に抱きつかれて頬ずりされてるマルセラの姿を、俺とルイズの隣にいた2人も微笑ましく見届けていた。
「アンリさんは、マルセラさんが来るという話を聞いてからずっとこんな感じでしたの。お二人はとても仲がよろしかったので。」
「・・・仲がいいというか、アンリがマルセラを引きずり回していた、というのが正しいのだがな。ただ、この感じも懐かしいな。」
「何か、二人の学生時代の様子が容易に想像できますね・・・。」
達観したかのような雰囲気の3人で、何ともなく会話していた。
「あ、申し訳ありません。私、マルセラさんの同級生で魔科学科に所属しているマリー=アンジェリクと申します。皆さんにはアンジェと呼ばれています。よろしくおねがいしますね♪」
「おっと、そうだったな。自己紹介が遅れて申し訳ない。私も、マルセラ君と同級生で魔科学科に所属しているジャン=エミールという。皆にはジャンと呼ばれている。よろしく頼む。」
「あの雰囲気に飲まれて自己紹介が遅れてしまいましたね。僕は、債譲権といいます。サイジョーでもケンでも好きな様に呼んでください。」
横でスキンシップをとっている2人をよそに、達観組3人はお互いに自己紹介を行い、魔科学科の説明に入った。
「それでは、親しみを込めてケンと呼ばせてもらおう。確か、ケンは、マルセラ君の話によると異世界から召喚された人物であるはずなのだが・・・。」
「そうですね、今日召喚されたばかりなので、色々とセントラルシティ内を見学してるところです。この世界の義務教育制度についても、大雑把な説明は受けました。」
「サイジョーさんは、魔科学科の説明は受けましたか?」
「魔科学科については、優秀な方々が専攻されるという程度ですね。詳しい説明まではされていません。」
エミーは同性同士ということもということもあり、名前で。アンジェはまだ会ったばかりということもあり、苗字で呼ぶことにしたといったところだろう。
「っと、忘れるところだった!私の名前は、ルイズ=アンリエット。みんなからはアンリって言われてる!よろしく!ケン御兄様!」
「ルイズさん!!」
と、思いだしたかのようにアンリは自己紹介をしてくる。
「「御兄様?」」と達観組から疑問符付きで声が漏れる。
「この兄ちゃん、マルセラに『御兄様』って呼ばせてるらしいよ!今日召喚されたにもかかわらず、まったく、とんだ変態御兄様だね!」
ニヤニヤとそんなことを言ってくるアンリ。達観組からは、まるで汚物を見るかのような視線が送られてくる。
あれ?これ俺は全く悪くないよね?何この感じ?理不尽じゃね?と心の底から叫びたかった。
今回遅れてしまった理由は大きく2つあります。
1つは、人名。
これまでの登場人物の名前は、一応法律に関係ある言葉や人名から拝借しています。これからも登場人物が増えるため、色々と人物名に関して資料を参考にしようと思い、参考文献を読む時間が必要でした。この物語のプロットは、大体頭のなかで完成してるのですが、1話1話の内容はその場で考えて投稿していることもあり、平日は帰宅後就寝までの間でやるにしては、参考文献を読む時間というものが結構きつかったです。
もう1つは、今回が新キャラ及びそのやりとりの回だったことです。
如何せん自分は会話回的な、キャラのやりとりに主眼が置かれる話を作るのが苦手なので、第三者目線や債譲視点で物語を進める予定でした。ですが、今回のように、一定の人物の存在が必要な場合があり、そのキャラの言動や立ち位置なんかを気にしながら物語を進める場合、苦手なこともあり時間がかかります。それもあって、今回出てきた新キャラが後々出てくるかどうかも現段階ではわかりません。個人的には出したくないのですが(笑)、出さざるを得なくなった場合はまた時間を必要とすると思いますので、どのくらいの人がこの小説を読んでいるかわかりませんが、ご了承ください。