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法律初心者の異世界奮闘記  作者: T.N
第1章 魔科学世界と法
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第2話~依頼~

「そう大声を出すでない、転移ごときで驚いておっては器が知れるぞ。まずは落ち着くのだ。」


 ジョーウンは告げた。しかしこちらは日常生活で転移なぞ使っていないのだから叫びたくもなるわ、と心のなかでひとりごちつつ、今の状況を理解しようと努めることにした。


「こちらはあなた方の世界と違って転移なんてものは存在しないものでね。それはさておき、なんで俺が召喚されたのか理由を聞きたい。」


 まずは情報収集に努めようと、話を切り出す。それに対して、ジョーウンは、


「そうであったな。単刀直入に言おう、お主の法の知識を我々に分け与えて欲しい、ということと、お主に我が国の法の編纂を手伝って欲しい。」


 思わぬ依頼に眉をひそめる債譲。


「そんな国の根幹に関わることを、俺みたいな法律初心者に依頼するのか?言っておくが、俺は法律を勉強中の学生だぜ?召喚する相手間違ってないか?」


「そのことなんだがな・・・。召喚する際に、召喚する相手に条件付けをすることで我々の目的に沿う者を呼び寄せるのだがな・・・。今回条件付けしたのは、①法に詳しく努力している者であること、②我々の世界に理解を示すことのできる柔軟な思考のできる者であること、③我々の世界に比較的似通った文化・社会に存在する者であること、④我々の世界に来るに際して、法の知識に関する補助媒体を所持及び駆使し得る者であること、⑤未だ完全なる法ができておらず、改正作業が継続的に行われている世界の者であること、⑥犯罪者でないこと、とおおまかに言えばそんなところか。当然、他にも色々な条件を指定しておるがの。」


 頭を抱える他なかった。ただ、補助媒体云々を聞いて足下を見ると、スマートフォンがあることに気づいた。

 債譲は、必要最小限の荷物しか持たない主義であったので、スマートフォンは彼の主義にあっていた。というのも、普段、授業レジュメや判例をネットから検索し保存していたことから、大体の事はパソコンひとつでどうにでもなった。そして、パソコンのデータをスマートフォンにも共有していたので、何かあってもスマートフォンで作業ができた。未だに、紙媒体での作業も存在するが、ここまで突き詰めてデータ化している者はそう多くなかった。

 ちなみに、このスマートフォンはストロベリー社のものである。「厳しい世界を甘い世界に」をモット―に、世の中をより便利にしていくことを社訓にあげている会社である。なぜストロベリー|(苺)なのかというと、酸味と甘味が絶妙なハーモニーを奏でる自然的存在として、社訓にあってったからだとか。

 また、債譲がストロベリー社製のスマートフォンを使用している理由は、なんとなく、であり、別に「苺が好き」というわけでもない。余談だが、彼は1年前、友人と旅行に行った際に苺狩りでたらふく苺を食べる羽目にあい、それ以来「しばらく苺は食いたくない」と苺を口にしていない。


 話を戻そう。とりあえず、右の条件にあった者が債譲であったということらしい。これ以上この点をほじくり返してもあまり意味があると思えないので、さらなる質問をすることにした。


「まあ、その条件で俺が召喚されたというのは分かった。ただ、俺がその依頼を受ける必要はないわけで、断ったらどうするんだ?」


 少し危ない賭けだが、思い切って聞いてみることにした。そんな条件で俺がよばれた以上、今の俺の立場は中々に優勢であると思ったからだ。ここまでの情報で、召喚条件を結構絞っていること、この国は今法の知識を持つものを異世界召喚してまで (・・・・・・・・・)必要としていることがわかっている。ならばと思い一歩踏み込んだ質問をしたのだが、


「まあ断ってもよいが、お主、その場合どうするんじゃ?わしも聖人君子ではないからな、この国を護るために、お主が手伝わん限り元の世界に返す気もないし、この世界で生活する上での庇護も与えんぞ。」


 まったくもってその通りですね参りました、と心のなかで土下座した。聞くだけ無駄だった、ただ煽っただけじゃないか・・・と悲しい気持ちになった。債譲は、人を軽々しく試すものではないという教訓を得つつ、話を進める。


「たしかにそうだな。元々俺は召喚された時点で拒否できる立場じゃなかったってことだよな。・・・あんたも意地が悪いぜ。ってか、今国を護るためにって言ったけど・・・、貴方様のこの国でのお立場はいかほどになるのでしょうか・・・?」


 嫌な予感がした。会った時から感じていたが、なんかジョーウンは威厳がある感じがする。容器に気を取られていたせいで普通に話していたが、結構高い地位にいる御方 (・・) なのではないか。債譲は、疑問に感じたので聞いてみたのだが、


「わしか?わしはこの王国の王じゃ。当然娘のマルセラは第1皇女じゃな。」


「は?」


 なに王が勝手に俺を召喚してんの?娘も何やっちゃってんの?あんたら共犯だよ?あ、この国は転移は違法じゃないのか、とかどうでもいいわ!と心のなかで突っ込みつつ、債譲は唖然とした。

 今までの態度もそうだが、国王に対して煽った事実が、債譲の顔色を悪くするのに十分な理由だった。やらかした、と思った。この国で生きていく上で、一番敵に回してはいけない存在である、王。

 債譲の頭の中は真っ白になった。

 ただ、一言、頭のなかによぎった言葉があった


 (理不尽だ・・・)

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