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法律初心者の異世界奮闘記  作者: T.N
第1章 魔科学世界と法
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第13話~一時の平穏 その2/会議まとめ~

「・・・とんでもない真実ですね、さすが国王様。」


「まあ確かにワシのせいではあるのだが、それだけが原因というわけではないのもまた真実じゃ。それは君もわかってると思うがの。」


 ・・・確かに。それは歴史が物語っている。元々戦争一歩手前までいった国同士が、そう簡単に「はい仲直り」とはいかないだろうということは容易に想像がつく。更には、敵対感情や嫌悪感情を持った国の人々が入り乱れて、現在の二大国家状態が形成されたとなれば、国の意思を統一することも当然困難なものになるだろう。

 黒血死団事件に関しては、両国とも国の根幹を揺るがす事態に至ったからこそ協力関係が築けたのであって、例外中の例外だったといえる。いわゆる人種のるつぼと化した両国は、冷戦状態に近かったのではないだろうか。両国が次々と国を統合していく経過にも、色々とあったと言うし、今の状態に落ち着いただけマシなのかもしれない。

 だがしかし、とんだ「世界の闇(笑)」があったものだ。


「とりあえず、二国間の関係がよく(・・)わかりました。どうもありがとうございます。」


「素直に感謝されてるように聞こえんのは気のせいじゃな。他には何かあるかな?」


「そうですね・・・。これは個人的に気になったことなんですが、ジョーウンさんのお歳はお幾つなんですか?」


「む・・・。」


 あれ・・・?聞いちゃいけない質問だったのか?

 ちなみにだが、ジョーウンの見た目は、マルセラと同じ黒目黒髪、細マッチョ的な程よく筋肉がついており、身長が180cm位あるため、結構なダンディズムを醸し出しているオジサマと言った感じだ。ただ、召喚されたときに見たジョーウンとはかなり見た目が異なっている。最初見た時のジョーウンの印象は、死にかけの爺さんが容器の中でコードでグルグル巻きにされてるといった感じだった。


「・・・お主には話してもよいだろう。少し長くなるが、いいかな?」


「はい。」


 なんか重い空気が漂い始めた。マルセラも心なしか落ち込んでいるような感じがする。世界の闇(笑)に比べてもかなり重要そうな話のようだ。俺は居住まいを正して、聞く態勢を整える。


「まず、話は、私が魔科学の始祖であるトーマス=グローティウスの弟子であった頃に遡る。私、セオドア、ルドルフの3人はそれぞれに得意な性質があった。私が変化、セオドアが保存、ルドルフが超過という性質をそれぞれ魔科学において研究してきた。私で言えば、その一つが転移であり、セオドアで言えば結界であり、ルドルフで言えば陰影術であった。陰影術については、おそらく午後の会議で触れるであろう。

 とにかく、それぞれの得意分野を研究していった時代があった。それが約100年前だ。そして、師であるトーマスの死とともに、我々はそれぞれ魔科学を世界へと広めるために、諸国漫遊、二大国家以外の土地にも訪れ、魔科学を広めていった。そんな中、ワシとセオドアは、それぞれジャポネーゼとアメリアに根を下ろし、家庭を持つに至った。ルドルフは、二大国家以外の人々のために尽力すると言って、両国どちらにも所属しなかった。

 それから、ワシとセオドア、それぞれの第一子が成人したのが約50年前になる。この頃、魔科学競争が二大国家間で激化しており、ジャポネーゼは転移、アメリアは結界を軸に、国家間で技術戦争が起こっていた。この戦争で犠牲となったのが、主に魔法を使えない貧困層だった。特に、人体実験の類に利用された者達の顛末は惨憺さんたんたるものであった。

 これを危惧したルドルフは、前もって自分の弟子たちを集め、両国の動き次第では自らが抑止力として動くことを決めていたのであろう。結果として、黒血死団事件が起きるに至った。

 そして、黒血死団事件が解決したのが約20年前。それぞれの国が安定したのが約5年前、と言ったところか・・・。黒血死団事件の解決によって、両国間で技術提供があったことから、私は保存の技術を用いて自らの肉体をカプセル内で維持することで、生き永らえている。こんなことをするに至ったのは、私の子供達が黒血死団事件によって死んでしまったことにある。私ほど魔科学に精通する者も他に現れず、未だ生き永らえながらこの国を守護している。

 ここでやっと、お主の質問に対する答えになるのだが、本来の年齢は約120歳と言ったところだろう。しかし、この肉体の年齢は大体50歳後半といったところだ。

 ・・・そう。ここにいるアガツマ=ジョーウンは、仮の姿といえるわけだ。このことを知っているのは、お主以外にマルセラともう一人だけだ。他言無用、決して喋るでないぞ?」


「・・・はい。」


 とんでもない事実をぶっこんできやがった。またしても重要度の高い内容なだけに、心の安定が乱されて困る。これ以上ヤバイ話は聞きたくない。・・・聞いたのは俺なんだが、聞いて後悔した。おそらく、ここまで話したのは、俺に対する信頼と絶対協力の脅しと言ったところだろうか。こちとら契約の時点で腹くくってるんだから本当に勘弁してもらいたい。心のため息をつきながらスマホを見ると、結構な時間が経っていた。


「いい時間のようだし、この辺で質問タイムは終了としておこうかの。二人共、会議に遅れるでないぞ。」


「はい。質問に答えてくださってありがとうございました。午後の会議もよろしくお願いします。」


「お父様、ありがとうございました。」


「うむ。」


 二人して礼をした後、急いで昼食を平らげて、コップいっぱいの水を飲み干し席を立つ。


「マルセラも付き合ってくれてありがとうな。」


「いえいえ、私も自分の生まれる前のことでしたので、改めて聞けて良かったです。なので、お互い様ですよ♪」


 ちなみに、マルセラの母は当然亡くなっており、マルセラは自分の母親を直に見たことがない。体外受精の技術も進んでおり、母体を借りずに生育することが可能となっている。なのに、・・・なんて出来た子なんだこの子は。こんな妹いたら過保護になっちゃうよな~等と心の中で呟きながら、マルセラとはトイレの前で別れ、また会議室へと戻ることになった。

次回、この小説における魔科学についてのお話になります。

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