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何気ない日常の中の混沌としたカオス

作者: 江角 稚

タイトルは歪んでいますが、その割にストーリーはまともな方です(笑)

ただ、KAITOは主人公になれませんでした...

何を伝えたいのかすら

分からなくなってしまった




私は鳥籠の中で暮らしてる

「自由」なんて 言葉すら知らなくて


こじんまりとしているはずの「あの子」の部屋

それすらも 私の鳥籠より遥かに大きくて


小さな窓から見える

四角く切り取られた空


「切り取られた」なんて

あの頃の私は知らなかった


空と言う物は

小さくて四角い物だと思っていた


それらが皆

私の視界に入る全て




小さな、私の世界の全て




貴方がやって来たのは

四角い空の外側から


純白の羽に

青いマフラーを巻いた鳥


私はそれを

「青い鳩」と呼んだ


鳩は平和のシンボルで

青い鳥は幸せの象徴だから




まるで幸せを呼ぶみたい?

そう思えるのも今の内




貴方は私に

外の世界を教えた


そして誘うんだ

私も飛び立つように、と




だけども臆病な私は

無茶な駄々をこねるのです


「青空の下に飛び出したら

私の羽も青く染まる?


それならあの子の

幸せを願える?


そう約束するのなら

私も外の世界へ行くわ」




貴方は困り果てた顔で

ついには飛び去ってしまいました




……一人、

取り残されて




それでも私には

「あの子」しかいなくて


私のことを守ってくれる

暖かな眼差しを受けたくて


いつもご飯を持って現れる

「あの子」のことが大好きで


「あの子」の流れるような

さらさらの髪が大好きで




……つまり私は、

此処を離れたくなかったのです


この「鳥籠」と言う名の檻から

逃れる(すべ)を自ら放置して




鳥籠の扉など

最初から開け放たれていたのに


私は

最初から気付かない振りをして


まるで脚を鎖に取られて

がんじからめにされたように、じっとしていた




私が「あの子」からの愛情を失ったら

どれ位 哀しむだろう


呼吸も出来ずに

死ぬんじゃないか とか


無駄に考えてみた

空っぽの、小さな部屋の中で




「青い鳩」である貴方は

しばらく経った後、また現れた


私には この生活を

捨てる気は全くないと言うのに




小さな、私の世界の全て


例え小さくても、

私には全て




そう、此処こそが

「私」の「生きるべき世界」




それなのに

貴方は


その扉を

阻んでいたはずの窓を


「透明な壁」を

壊してしまった




私にとっては

最後の砦


「私」の「世界」を守る

唯一の手段だったのに




そこで私は

現実を思い知る


あんなに毎日現れていた

「あの子」が居ない日常に




外に飛び出し

川に飛び込み


渇きを潤し

飢えを凌いだのに




心は、空っぽのままだ




あの部屋に取り残された

鳥籠のように




貴方は私の羽が染まらない代わりに

青いマフラーを私にくれた


「僕の代わりに、幸せの歌を歌ってくれ」と言って


そして、

飛び立ってしまった




美しい歌声で

鳴きながら




私に残されたのは


青いマフラーと

貴方が託した青い鳥の「使命」




そうして 私は

外の世界を生きることを余儀なくされた




「幸せの青い歌鳥」


いつしか私は

そう呼ばれるようになって


人並みの幸せを手に入れた訳ですが


今でも時々

自分自身に問い掛けてしまうのです




あの時の私は

「あの子」の影に縛られたまま


閉じられた世界を

「自分の全て」だと信じたまま


アイスの旨味も

知らぬまま




餓死した方が

良かったのではないか、と




何を伝えたいのかすら

分からなくなってしまった


私の歌声は

今でも後世に伝えられるらしい




何を伝えたいのか

自身では 意味さえ分からないと言うのに

もしも私が鳥になって、「KAITO」と言う名の歌鳥から世界の広さを学んだら。

私は貴方と同じ程の業績を残せるのだろうか。




私には、分からない。

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