第一五幕(最終幕)
「いや~、テミの治癒魔法はすっげぇなぁ! マゼンダもルファも俺も、もう傷ひとつないぜ」
ブロントがそう快活に言った。
「クロウも、褒めてやれよ。かわいい妹の大活躍だぜ?」
「……まあ、よくできたかもな」
そっぽを向きながら、人間姿のクロウは言う。
「はいはい出前ですよー」
ドアの外からそう声がした。ミドリの声だ。
「はいはいー」
テミが出る。
「あれ、テミぃ。なんか嬉しいことでもあった?」
テンミリ探偵事務所に入るなり、ミドリはそう言ってのけた。全てを知ってでもいるように、にやにやと。
「ケーキケーキ!」
ティンクが小学生のように跳ね回る。ミドリの店に注文したのは、大きなバースデーケーキだった。
「事件の解決祝いにケーキはいいんですけど、なんで誕生日ケーキなんですか?」
「細かいことはいいんだよ。まあ、いきなりそんな注文されて、準備してなかったせいなんだけどね」
ミドリは笑う。テミも笑う。ブロントはいつものように快活に笑い、マゼンダだけは不機嫌そうな顔をしていた。
「結局あたしのシュークリーム、誰が食べたんだろう……」
「そんなのブロントに決まってるじゃない。心を読めば一発さ」
ミドリがそう言う。ブロントは驚いたように、訊き返した。
「俺の心だけは読めないんじゃなかったのか? 昔、そう聞いたはずだが」
「あれは嘘さ。もう隠さないことにしたんだよ。……それでも、ブロントが仲間なのは変わらないんだから」
「……そうか」
ブロントは安心したように笑い、ミドリは心配のないように笑った。
「うん? なんの話?」
ふたりを見て、マゼンダが分からないという風に腕を組む。
「早く食べようよ!」
ティンクが急かす。猿のお人形さんみたいに、手を叩きながら。
「……まあいいわ。こんなケーキを前にして、シュークリームひとつで怒ってられないし」
「お、マゼンダ成長したじゃん」
ミドリがからかうように笑う。
「ルファさんもすぐ帰らずここに残ればよかったのに」
テミがそう呟きながら、天井を見上げた。
「今度、星を見にいきましょう」
テミの思考を先取りして、ミドリが言う。
十月二十八日の夜は、笑顔に包まれていた。
* * * * * *
「ただいま」
リンが帰宅した。明るい部屋で、ひとりパソコンをいじっていたブルースが出迎える。
「おかえり、リン」
ブルースを見るとリンは、すぐさま彼を抱きしめた。
「今日、病院に行ってきたんだ」
ブルースの胸に顔をうずめて、リンは踊るような声で言う。
「二ヶ月だってさ」