第二章 出会い
二人が出会ったのは大学のサークルだった。音楽同好会というこのサークル、活動内容は音楽を聴いたり、好きなアーティストを紹介しあったり、曲を作ったり、弾いたりする等、とりあえず音楽についてならどんな活動でも良いというものだった。二人の趣味を満たすにはとても適していた。そんなサークルに入った当初はお互い名前も分からない状態だった。
二人がお互いを知ったのはサークルの忘年会だった。周囲と打ち解けて何の話でも合わせることができる小野春と、大人しく無口を極めている佐野飛鳥は隣同士だった。先に声をかけたのは小野春の方だった。
「はじめまして、ですよね?」
そう柔らかに微笑みながら小野春は声をかけた。その声と笑顔で佐野飛鳥は恋に落ちたと後で気がついた。
「は、はじめまして」
いきなりのことと高鳴る胸に動揺しながら佐野飛鳥は返した。
「一度君と話したいと思っていたんだ」
小野春は本心を言った。
「そう思って戴けるなんてすごく嬉しいです」
佐野飛鳥も本心を言った。
それから二人は延々と話し続けた。音楽について語り合い、お互い好きなアーティストの良い所を話したり、練習中の楽器の話や最近話題のミュージシャンについてなどとりあえず話しまくった。勿論忘年会だけじゃ時間は足らず、二人で別の居酒屋へと繰り出して、だ。
お互いに意気投合することが多くもっと知り合いたい、そういう気持ちが二人の心に芽生えていた。そして二人とも惹かれあっていた。
それから二人はサークルが開催される時は行動を共にしたりした。二人の恋心は育まれていった。
告白したのは佐野飛鳥のほうだった。サークル帰りに夕飯を一緒に食べに行きその帰りに佐野飛鳥は自分の気持ちを打ち明けた。
「小野君」
早まる心臓を押さえながら佐野飛鳥はそう呼んだ。
「何?」
「私ね・・・」
「うん」
「小野君のことが好きなの」
「・・・うん」
「迷惑じゃなかったら、私と」
私と付き合ってください。と言い終わらないうちに小野春は腕に抱いた。
「全くもって迷惑なんかじゃないよ」
俺も佐野さんのことが好きだもん。と言い終わらないうちに佐野飛鳥は泣き出した。
「ありがとう、小野君」
「こちらこそ」
こうして二人の交際は始まった。
「次、いつ会えるかな?」
帰り道。街灯が照らす住宅街を二人は歩いていた。そして何気なく続いていた沈黙を佐野飛鳥はこの質問で破った。それはとても意味深気であった。
「次・・・いつだろうな」
それに答える小野春の声も佐野飛鳥の所為か真面目であった。
そして再び沈黙が過ぎる。
「ねえ、また会えるよね?」
「なあ、また会えるよな?」
と二人同時に言った。
二人は思わず見つめあいそしてどちらともなく笑った。
また会える、そう信じれる様な笑みを二人とも浮かべていた。
会えるよ。ああ、会えるさ。そう囁くと二人は月明かりの下、静かに唇を重ねた。