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立浪竜子と赤崎紡岐

 「 みなもって本当、髪綺麗だよね……ツヤツヤしてて、なんかいい匂いがするし……」

「何嗅いでるんだよ」

「すぅ~」

「嗅ぐな!」


 私は、みなもの髪をクシでといていた。

 みなもは髪を大切にしていない。寝癖とかですぐにぼさぼさにしてしまう。女の子なんだから、もっと髪のケアをして欲しい。


「こんな綺麗な髪なんだから、勿体ないよ」

「別に、私の髪なんだから、どうしようと勝手だろ」

「もうみなも一人の髪の毛じゃないんだよ?」

「なんだそりゃ、あなた一人のからだじゃないのよ、みたいな言い方だな」


 実際、みなもの髪はといていて楽しい。こんな漫画でしか見たことないような、金髪で、長くて、綺麗なものは、そうそう目にするものではないからだ。


「はい! とけたよ。やっぱりみなもの髪は綺麗だね」

「まったく、どうせすぐぼさぼさになるから同じなのに……」

「その時は、また私がといてあげる」

 

 それにしても、みなもは本当に美人だ。

 ただこうして、座っていだけでも、みなもはとても絵になる。まるで絵画のようだった。

 タイトルはそうだな……『貴婦人の眼差し』かな。

 一応育ちがいいし。品の良さが滲み出てるよ。

 ……口が悪くて、目つきも悪いけど。


「クシ貸せよ、次は私が彩果の髪をといてやる」

「ありがとう、じゃあお願いしようかな」


 手先が器用なだけあって、私より上手だった。


「みなもみたいな美人は得だよね」

「お前だって美人だぞ、自覚してないのか?」 

「そんな事ないよ、私なんてちんちくりんだもん」

「そんな事いって、お前を可愛く産んでくれた環瑠さんに悪いと思わないのか?」

「ごめん………」


 ママの顔が浮かんだ。とても美人な女性で、私はママに似ていると良く言われるので、私も美人だと皆言ってくれる。


「灰色の長髪、整った顔立ち、スレンダーな体つき。

環瑠さんによく似てるよ、こんな美人と夫婦なんて、私は幸せものだな」

「ありがとう、みなも」

「でも彩果のいいところは中身だけどな」

「みなもー!」  

「よしよし」


 私の髪は好きなアニメのキャラクターの真似をして伸ばしている。手入れが少し大変だけど……




「お前って自己肯定感高いのか低いのか、分からないよな。自分の事を天才絵師だって言ってる癖に、絵師の世界では末席だと思ってるし」

「自分を鼓舞するためだよ、そうしないと、心が折れちゃうからさ、周りが凄い人ばかりなんだもん」


 どんなに私が天才だとしても、私よりも凄い人なんて、数えきれない程いる。皆、私より上手で、実績もある。五年間しかプロで活動していない。

 だから、私は凄くない。大した存在ではない。

 



「謙遜するのはいいけどよ、お前を見い出した立浪編集長はそんな事、思ってはないと思うぜ」

「竜子様……私の事、どう思ってるんだろ」

「天才だろ、お前をスカウトした時に言った言葉みたいだからな」

「そうなのかな……」

「それと、赤崎さんにも失礼だろ、」

「そうだよね……ごめん」




 立浪竜子(たつなみりゅうこ)。『こみっく百合園』の編集長で、私をプロの世界に導いてくれた人。

 編集時代は何本もの作品を立ち上げた剛腕で、私が好きな日常系百合漫画『はーとふる』を立ち上げたのも彼女だ。

 

「あの時、竜子様の目に私の描いた絵が止まったから、私は声をかけて貰ったんだ」




 中学三年生の冬。

 SNSを始めた私は、自分の描いた百合絵をアップしていた。

 

 最初の内は、フォロワーも数十人程度だったが、少しずつ増えていくのが嬉しくて、何より上手と言って地道に活動を続けていた。


 フォロワー達の無茶ぶりもあった。


「百合しか描かないんですか?」

「性転換させて竿役をいれてください!」

「女の子の中に汚いおっさんを混ぜてください!」


 それでも私は百合を描き続けた。そうしているうちに、男を描いて欲しいという声は消えていった。

 

 私が百合を描くアマチュア絵師だと言う事を認識してもらえたようだ。


「ぷらむさんの描く百合絵はとても可愛らしいです」

「えへへ、ありがとう。あっ、フォロワーが百人を超えてる!」


 私は少し有名人になっていた。

 みなもの扱きを耐え抜いた私は、絵の技術が見違える程に上達していた。


 それでもプロには到底及ばないのは、自分でも分かっていた。だけど、描くのが楽しかったから、続ける事が出来た。

 それにプロになるつもりなんてなかったからね。




「皆、今日描いたのは『相合傘だよ』」

「さすがぷらむさん!」

「とても尊いです」

「ありがとう。やっぱり他の人にそう言って貰えると嬉しいな」 


 私にとっての原点の百合絵、相合傘百合。

 こうして見てみると、随分上達したものだ。

 私が初めて描いた絵はお世辞にも上手いとは言えなかったからな……


「君の絵は中々素晴らしいじゃないか」

「ありがとうございます」


 コメントの数が少なかったので、私は、一つ一つに返信していた。


「ほう、礼儀深いじゃないか、感心するな」

「コメントもそんなにないので、全員に返してるんですよ」

「はっはっはっ、素直でよろしい。君は大物になるだろう」


 その独特の口調の人は、何故だか、縁と言うものを感じていた。今だから言える事なのかもしれないが、

この人が竜子様だと気付いていたのかもしれない。


「君はプロには興味ないのか? この実力なら、十分通用すると思うぞ」

「お世辞が上手いですね、私なんて、ただのアマチュアですよ」

「お世辞じゃない、もう一度言うぞ。君の絵は凄い。プロでも通用する」


 その人の言葉には説得力があった。私は、その人に興味をもった。


「あの……あなたは?」

「私が『こみっく百合園』の編集長だと言ったら信じるか?」


 みなもが連載を持ってる雑誌だ。私のバイブルでもある。その雑誌の編集長を自称するこの人の言う事に私は、心を奪われていた。


「私の連絡先を乗せておく。君からの返事を待っているぞ」

「個人情報筒抜けなんですけど、いいのかな……」


 新手の詐欺かもしれない。やっぱり相手しない方がいいのかも……


「なおこの連絡先は自動的に削除される。期限は今日までだ」

 「スパイ映画か何かかな? ていうかちょっと待ってください! お名前はなんて言うんでしょうか!」

「立浪竜子だ」

 

 その名前を何処かで見た事があった。

 確かに百合園の編集長だった気がする。

 インタビューを受けているのを、ネットの記事で見た事があったからだ。


「もしかして……本物?」




「君がぷらむ君か?」

「はい、お話を伺いたくて」


 この人と、もっと話がしたい。私はその連絡先にかけてみた。


「クックック、君も物好きだな、こんな怪しい人物の連絡先を繋げてしまうなんて」

「やっぱり、詐欺師……」

「安心してくれ、君から取ったりはしない。君に求めるのは、絵を描いて貰う事だ」

「絵を描く?」

「何をきょとんとしてるんだ? 言っただろ、君の絵はプロでも通用すると。だから描いて貰いたくて、君に連絡先を知らせたんだ」


 それは分かっている。だけど、現実味が無かった。この人が百合園の編集長で、私をプロの実力があると認めてくれている。そして絵を描いて貰おうとしている事。全てが嘘みたいだった。


「私は何をすればいいのでしょうか」

「絵を描いて貰う」

「何で私が?」

「何度も言わせるなよ、私は結構短気なのだ、君はプロで通用するからだ」

「信じていいのでしょうか」

「それは君次第だ」


 私は迷っていた。この人が詐欺師かどうかではない。プロになるかならないかをだ。

 

「私がプロに……?」

「そうだ、絵を描いてお金を稼ぐんだ。といっても、売れればだがな」

「私……お金とかどうでも良くて、ただ絵を描くのが好きで、それを人に見せて上手だねとか、尊いねとか、言って貰えるのが楽しいから描いてて……」

「立派過ぎる理由じゃないか。道徳のお手本のような受け応えだな」


 別に大した事は言っていない。心から思っていた事をそのまま口しただけだ。


「そんな純粋な君には、是非プロにきて貰いたいものだな。君の描く絵を見せ付けてやれ」

「どうやってなれるんですか、プロに」

「おっ、漸くその気になったようだな。簡単だ、絵を描け」


 抽象的すぎる。なりたくてもなれない人達もきっと沢山いるだろうに、そういう人達は今も絵を描き続けているだろう。


「我が社からイラスト集を出版するんだ。君の描いた絵のね」

「我が社って……」

十全社(じゅうぜんしゃ)」だ。


 百合園を出版している大手出版社だ。確か本社は東京にあるんだっけ。


「詳しい話は部下から聞いてくれ、彼女の連絡先も教えおく」

「あっあの……私まだ……」

「決まりだな、おめでとうぷらむ君」

 

 なんて強引なんだろう。立浪さんの事をネットで色々調べた時、剛腕だと言う事を知る事が出来た。

 何作もの作品を立ち上げてきたのだと。

 そのやり方は多少力づくだと言う声もある事を。

 でも結果を出している。それは本当だと。

 あと、クリエイターと部下に優しいと。


「こんな形でいいのかな……」

「きっかけなど、どうでもいい。結果が全てだ」


 確かに、プロになったら、それだけを求められる。

 プロになったきっかけなんて、誰も気にしない。


「責任は私がとるつもりだ、だから君は、安心して絵を描いてくれ。それ以外は要求しない」

「分かりました……よろしくお願いします」

「うむ、こちらこそよろしく。そうだ最後に私からいくつか言葉を贈ろう、心して聞け」


 彼女は言葉を続けた。


「君は今! プロへの第一歩を踏み出した!」

「君は凄い、必ず成功する」

「君の絵が私の目に止まった事を幸運に思え」

「君はもっと自信を持った方がいい」

「君の絵は尊いな」


 そう言って彼女は、電話を切った。

 ここまで一時間と経っていなかった事を時計を見て気付いた。


「なんか……大事になっちゃったな」

 私は教えて電話番号にかけてみた。

 赤崎紡岐(あかさきつむぎ)。女性の人かな。


「あの、立浪って人に言われたんですけど」

「あぁ、あなたがぷらむさんね、竜子が言ってた」


 竜子……? 上司を思い切り呼び捨てにしている。


「もう! 竜子ったら、勝手に決めないでよ! いつもそうなんだから! はぁ? 言い訳しない!」


 同じ部屋にいるのだろうか、職場か? でももう夜の九時だし、残業かな。もしくは、一緒に住んでいるか……いや、詮索はやめておこう。


「あっごめんなさい、さっきのは気にしないでね」

「はい、何も何も聞いてない事にします」

「あはは、ありがとう」


 もしかしたら、二人は夫婦なのかもしれない。

 立浪編集長が尻に敷かれて……余計な妄想をしてしまった。


「私は赤崎紡岐。百合園の編集よ、『月映えに芽生える』って知ってる? あれを立ち上げたのは私なの」

「えっ凄い!」

「でしょ、エース編集者なんだよ。なのに私の意見に皆、文句ばっかり、私の言う通りにした方が面白くなるのにさ」


 何やら一人で語り初めた赤崎さん。


「あぁ、ごめんね。今のは忘れて」

「あの、私は何をすれば」

「イラスト集を描いて欲しいの、テーマに沿ったものをね」

「テーマ?」

「あなたが描いてる絵があるじゃない? 相合傘とか、膝枕とか、ああいう絵を何か一つの題目を元に描くの」


 よく分からない。赤崎さんの説明が下手なのか、私の理解力がないのか……多分後者だろう。


「テーマを学校にすれば、その中での絵を描くでしょう? 授業とか、部活動とか」


 あぁ、そういう事か。漸く理解した。


「ぷらむさんの絵を一つの物語にしたら、絶対面白くなると思うんだ。天才編集者の勘だけどね」

「分かりました。よろしくお願いします」

「素直の人ね」


 ていうか、私が中学生な事、伝わっているんだろうか。そろそろ寝たいんだけど。良い子は早寝なのに。




「うーむ、あなたの絵を見させて貰ったのだけれど……凄く尊いのね! 見てるだけで、ときめいちゃう!」

「ありがとうございます。プロの編集者さんからそう言って貰えると、自信になります」

「あら、そんな謙遜してていいの? あなたはこれから、多くの人に絵を見せる事になるのに、しかもお金を貰ってね」


 その言葉に、私は実感した。プロがどんなものか。

 同時に不安でたまらなくなった。多くの人に私の絵を見せるという事が、恐怖に感じられた。

 馬鹿にされたらどうしよう。笑われたらどうしよう。興味がある人だけが来るSNSと違って、沢山の人の目に触れる事になるからだ。

 私は、逃げ出したくて、たまらなくなった。


「あの! やっぱり辞めま……」

「そしたら、もっとこの尊さを見せる事ができる。ぷらむさんの絵を、沢山の人に知って貰える。この尊さに、悶えされる事が出来る」

「……え?」


 私の絵で、悶えさせる?


「だって、こんなにも尊いんだもん。皆、ぷらむさんの絵の虜になっちゃうよ」

「私の絵が、皆を?」

「どう? 描いてみたくなった?」


 もっと多くの人に私の描いた絵を見せる。それはとても怖い事だと思っていた。いや、今も怖い。

 だけど、それを怖がってたら、何も出来ない。貶される事もないけれど、褒めて貰う事もない。

 だったら、今まで通りでいればいい。

 だけど試して見たかった。自分の実力を。

 そして、もっと尊いといわせたくなった。


「私、描きたいです。」

「わかった。じゃあ、テーマを出すから、この期限までに描きあげてね」

「期限があるんですか、しかも一ヶ月以内って」

「いつまでも待ってられないもの、こっちも暇じゃないからね。これを守れないなら、プロの資格なんてないからね」


 身が引き締まる思いだった。


「ぷらむさんに描いて欲しいのは、『四季』をテーマにした百合絵よ。日本には四季があるからね。色んなシチュエーションも存在するわ』

「四季……」


 私の頭の中では、既に様々な光景が浮かんでいた。


「じゃあこれを描いてね。私が考えた、四季を題材にした百合物語」


 もう思いついているのか。しかもこれは、私が思い浮かべたものとは違っていた。




 まずは春。高校の入学式。二人の少女は再会を果たす。 桜の花びらが舞う、通学路での事だった。

 二人は抱き合って再会を喜んだ。直接会うのは幼稚園の卒園式以来だったから。二人は思い出を作っていこうと、約束を果たすのだった。


 二人で桜の花見、思い出の地巡り、鯉のぼり。春を百合イベントで満喫した。


 夏。二人は海で思い出づくりをしていた。

 砂場ですいか割り。砂遊び。海で心ゆくまで遊んでいた。

 他にも花火大会。夏祭り。百合イベントで、夏の思い出を作り上げて言った。二人は距離を縮めていく。


 秋。二人で落ち葉を集めて、焚き火をしていた。

 焼き芋を頬張って、談笑する二人。

 他にも学園祭。ハロウィン。紅葉狩り。様々な百合イベントで二人は、お互いの仲を深めていった。


 冬。二人は雪だるまや、かまくらを作っていた。

 そしてかまくらの中で二人は横になっていた。

 お互い、いつ愛の告白をするのかを、考えていた。

 全く同じタイミングで告白したので、思わず笑ってしまった二人。そして、お互いに告白を受け入れる。

 二人は抱きしめあった後、唇を重ねた。

 これからはずっと一緒だと、約束を交わすのだった。恋人として……


 冬は他にも、クリスマスや大晦日、お正月などの百合イベントがある。




 凄い……これを赤崎さんが考えたなんて……私の為に。


「どうかな? 何十枚もあるけど、描いてくれる?」

「もちろんです!色彩果、描かせていただきます!」

 私は、この物語を、描きたくて描きたくて、仕方が無かった。ウズウズしていた。


 赤崎さんは凄い。さすがエース編集者。クリエイターの創作欲を刺激してくる。


 この人が生み出した物語を、もっと描いて見たかった。この人と仕事がしたい。私は筆を走らせた。


 あと、百合イベントって何だろう……




「出来た……四季百合、完成!」


 私は三週間で計五十枚もの絵を描き終える事ができた。初めての脱稿だった。


「どうですか! 赤崎さん」

「凄いわ、良く描けてる。さすがぷらむさん……ぷらむ先生ね」

「えへへ、先生だなんて……照れます照れます」

「でも、売れなかったら、意味ないけどね……」

「やっぱり辞め……」

「冗談よ、そんな事気にしちゃだめ」


 自分で言ったんじゃないか。上げて落とすタイプだな。


「ねぇ、ぷらむ先生、この絵を描いている時、どんな気持ちだった?」

「どんなって……凄く楽しかった!」

「そう、良かった、その気持ちを忘れないでね。もし……忘れちゃったら、周りの誰かに思い出させて貰ってね」

「赤崎さん、このイラスト集のタイトルは?」

「あぁ、そうだったね、えーと……この作品のタイトルは『四季巡る百合の花』」


 あれ、しきめぐるってママの名前じゃん!

 えへへ、縁起がいいなぁ。




 『四季巡る百合の花』は、三十万部を売り上げる大ヒット作になった。

 私、ぷらむの名前は、一躍有名になった。

 これが私の、プロ絵師としての、始まりだった。




「いやー、いい話だよね」

「何回この話してんだよ、聞き飽きたぜ」

「竜子様と紡岐のお陰で、私はプロになる事が出来た。そして、百合の尊さを伝える事が出来てるんだよね」


 みなもはうんざりした様子だった。何度も聞かされて飽きているみたい。


「しかし、編集長も強引だよな……SNSに自分の連絡先晒してまで彩果を勧誘しようとするなんて」

「結局、あの電話番号は変更したらしいからね。女の子がホイホイ身元を晒しちゃダメだよ!」 

「男ならいいのかよ」


 あの人自信、普段はSNSやネットの大手画像投稿サイトを徘徊して、人材発掘をしているらしい。

 私の他にも、竜子様が見い出して、プロになった人もいるようだ。


「紡岐も凄いよね、みなもの『つきめば』を立ち上げたじゃなくて、私のイラスト集も発案してくれたんだから」

「まさにエース編集者だな、……あんな事がなければ、今も百合園の編集部にいたんだよな」


 なんか凄い深刻な話みたいに言い出してるが、別に紡岐に不幸があった訳ではない。ただ異動になっただけだ。

 それに、彼女は別の仕事に専念したいようだし……それは、私にも深く関わっている事た。


「でも、私にとって一番の恩人はみなもだよ! 未熟者だった私に、手取り足取り、絵の技術を教えてくれたんだからさ」

「何だよ照れるぜ」

「えへへー、照れるみなももかわいい、このこのー」


 肘でつついて茶化す私。みなももまんざらではなさそうだ。


「お前が一人前になってくれた事が、師匠として、何よりも嬉しいよ」

「みなもー!」

「よしよし」


 そろそろオーバーキルを持ち込む時が来たと思う。

何度も何度も原稿を見返して、修正を行ってきた。

 これ以上直すところなど、ないくらいに。 


「みなも、いよいよだね、オーバーキル持ち込み」

「あぁ、もし駄目なら……」

「そんな事考えるなって、みなもがいったんでしょ?」

「そうだったな、すまん。弱気になってた」

「きっと大丈夫だよ、あっさり連載を勝ち取って、大ヒットするに決まってるんだから」

「そうだな……」




 きっと大丈夫。私達の覚悟は決まっていた。

 受け入れる事ができるほどに。

 たとえ、どんな結果になろうとも――

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