恋は炎と熱
私はなんていう勘違いをしていたのだろう。みなもが他の女性と不倫をしていたなんて……そんな筈ないのに。なのにこんな愚かな事をするなんて。妻として失格だ。
「みなも、本当にごめんなさい」
「気にするなって言っただろ、人間なら誰でも過ちを犯す。いや、過ちかどうかも怪しいな。彩果が私の事を想いすぎての事なら、過ちじゃねぇよ」
「みなもー!」
「よしよし」
みなもには赦してもらったけど、私はこの事を一生後悔するのだろう。私がみなもの事をずっと好きでいる内はね。
恋とは、熱と炎だ。人が誰かに恋をするという事は、心に炎が灯ると言う事だ。恋の炎がメラメラと自分の中で燃えたぎる。その炎は熱を帯びている。心の中は、その炎と熱で火照りそうになる程熱くなっている。その状態である限りは、余程の事が無い限り、恋が冷める事が無い。炎が消える事も、熱が冷める事も、ありはしないだろう。
だけど炎はずっと燃えている訳では無い。いつかは消えてしまう。永遠に燃え続ける炎なんてありはしない。炎が消えたとき、熱も冷めていれば、その恋は終わりという訳だ。
……だけど炎が消えても、熱が残っている事がある。それが恋から愛へと変わる時だ。愛は熱だ。熱と……何だろうな、それは人によって違うものだと思う。私の場合は、熱とマグマだ。炎より強くて、熱くて、触っただけで火傷してしまう。それが私の心の中で煮えたぎっている。
私の恋の炎は消えた。だけど熱は残っている。冷めるばかりか、むしろもっと熱を帯びている。のぼせる程に、茹だる程に、みなもに対する想いは、日に日に強くなっている。冷める訳ない。どんどんみなもの事が好きになっている。知れば知る程にね。
彼女の良いところも駄目なところも好きだ。 良いところしか愛せないのなら、長続きしないと思うしそんなの愛じゃない。だからって駄目なところに目をつむっていても、良い訳じゃない。それら全てを受け入れて愛する事ができるのが愛だと私は思っている。
この熱がある限り、みなもに対する愛は冷める事はないだろう。それが冷めたら愛も消える。離婚と言う訳だ。だけど私に限っては、そんな事は起こり得ないと断言できる。
私の熱は、今も私の中で帯び続けている。高熱で倒れちゃいそうなくらいの温度で、私の心を熱くしている。それくらいみなもの事が好きなんだ。これが私の愛なんだ。
……こんなクサイポエム、誰かに聞かれたら恥ずかしくて発狂してしまいそうだ。こんなものは、みなもが言いそうな事なのだから。でも私のみなもへの想いを表現するのには、これくらいがちょうど良い。それだけみなもの事が好きなのだから。そして今も、みなもへの熱は増していっている。愛は熱を帯びる。
みなもと私は、湯船に浸かっていた。
私達は毎日一緒にお風呂に入っている。夫婦なら当然の事だよね。
「……しかしあれだね……みなもってさ……本当におっぱい大きいよね!」
「なんだよ今更、分かりきった事だろ」
「何を食べたらそんなに大きくなるの?」
「別に、特別なもんは食べてねぇよ、気付いたらこうなってたんだ」
「私なんて全然成長しなかったのにさ」
「私は小さい胸の方が好きだぞ」
「みなもー!」
「よしよし」
ほら見ろ、 ひんぬー派もいるんだよ! 大きければいいもんじゃない。揺れればいいもんじゃないんだ! それにひんぬーの利点も沢山あるからね。
……とくになしとか言わないでね。新月じゃないんだから。
「胸なんてでかくても良い事そんなにないぜ、重いし、肩がこるし、汗疹ができるし……何より視線を感じるんだよな男女問わずにな」
「確かに、みなもの胸はついつい見ちゃうもん、その気持ちは分からなくはないよ」
この辺は巨乳あるあるなのかな。私の胸に視線を感じた事は三度くらいだった気がする。ひんぬー好きがそれだけいるのだろう。
「年取ったら垂れるっていうし……全然良い事ねぇな」
「逆に利点を感じる事はある?」
「胸に物を乗せる事ができるくらいかな」
「タピオカが流行ってた時に胸に乗せてたよね……もちろん私は乗らないけど」
「それくらいだな」
「揉まれた事は?」
「大星の奴には幾度となく」
さすが大星教授だ。他の女の子のおっぱいを揉む子なんて、新月以外には存在しないと思ったけど、結構いるみたいだ。私は揉まれた事なんて、みなもと新月以外には無かったな。
……別に揉む胸が無い訳じゃありませんよ。ひんぬーだって、揉もうと思えば揉めますから。ひんぬーにはひんぬーの良さがありますから。
「ていうかさ、何でいつもノーブラなの?」
「いや……ブラのホックに手が届かねぇんだよ」
何だそりゃ、二十代なのに体が硬すぎでしょ。
ていうかホックなしのブラジャーの存在を知らないのかな。
「ホックなしのブラジャーがあるから、今度買いに行こ。みなもみたいなおっぱい大きい人はすぐに垂れちゃうよ?」
「本当、巨乳って良い事ねぇな」
贅沢な悩みだ。巨乳のひんぬーが分かりあえる日は二度と訪れないのだろうな……
「そう言えばおっぱいって、揉み続けると大きくなるしいぜ」
「へ、へぇ……」
「揉んでやろうか?」
「結構だよ」
「後で揉む気だろ?」
「何で分かったの、思考盗聴?」
「いつも言ってるじゃねぇか、巨乳が羨ましいって、だから大きくする為に揉んでやろう」
そう言って、みなもは私の胸を両手で優しく揉み始めた。
「ちょっと、みなも! くすぐったいって!」
「本当に小さいな、手のひらに収まるくらい小さい」
「はぁ……はぁ……みなも……」
「どうした、気持ち良いのか?」
「全然気持ち良くないもん! あぁ!」
「本当は気持ちいいじゃねえか。可愛い喘ぎ声を出しやがって」
「……」
不覚……いつも揉んで貰ってるけど、やっぱり慣れないな。新月に揉まれてる時と、全然違う。こんなに気持ち良くなかった。やっぱり愛する人と親友との違いなのかな。
「この辺にしといてやるよ。彩果が風呂場で絶頂されても困るからな」
「はぁ……はぁ……ていうかこれ、逆じゃない? 私がみなもの大きなおっぱいを揉んでみなもが喘ぐんじゃないの普通」
「私のを揉んでも良いぞ、いつも情事の時に揉んでるだろ」
「もう十分大きいでしょ! これ以上大きくしたいの?」
「いや……そういうつもりで言ったんじゃねえ。お前の胸へのコンプレックスは思った以上だな」
こうなったらもっと大きくして、年中肩こりさせてあげるよ! 巨乳のデメリットを思う存分、味あわせてやるんだから!
「分かった、揉んであげるよ。モミモミー」
「ちょっと待て! そんなに激しく揉むんじゃねぇ!」
「あれれーもう感じてるの? まだ揉み始めたばっかりなのにさ」
「うるせぇ……お前の下手な胸揉みなんか屁でもねぇよ」
「じゃあ何で、そんなに気持ち良さそうなの? エッチの時と同じ表情になってるよ?」
「はぁ……はぁ……なってねぇよ」
みなもの痩せ我慢なんて、すぐに見抜ける。本当は滅茶苦茶気持ち良いんだ。だったらもっといじわるしてやろう。みなもが私にしか見せない表情を堪能してやるんだ。
「ほら……みなもの弱点はここでしょ?」
「つっ……おい、どこ触ってんだよ」
「私は皆の事、何でも知ってるんだからね」
「そんな事まで知る必要あるのかよ……」
「あるよ、夫婦だもん。パートナーのそう言う所を知っくのが、長続きの秘訣だよ」
「そんなものなのか……」
みなもだって、私の弱い所を知っていていつも攻めてくるんだもの。お互い様だよ。
「みなもー気持ち良い? 気持ち良いでしょー」
「おい! もう良いだろ!」
みなもは私の腕を掴んで、揉むのをやめさせた。あんなにも強がっていたくせに、結局は感じていたみたい。
「はぁ……はぁ……彩果」
「みなも……」
私達はキスをした。お風呂での百合キス。この光景も後で描く事にしよう。
「はぁ……相変わらずお前のキスはおこちゃまだな。いいかこうやるんだよ!」
「むぐ……」
みなもは私にディープキスをする。しかもこの前よりも上達していて、私は湯船の中だというのに、体中の力がぬけてしまった。でもみなもが支えてくれたので、溺れずに済んだ。
「おいおい、溺れちまうぞ」
「はぁ……はぁ……みなものせいだよ……キスが上手くなりすぎだよ。気持ち良すぎて脱力しちゃったじゃん」
「私は日々成長しているんだよ、お前に負けたのが悔しかったからな」
今の私がこのディープキスを越えるのには、まだまだ鍛錬が必要だろう。でもいつかみなもにまた腰を抜かせてやる。その為にも特訓をしなければ。
私は風呂上がりの一杯にコーヒー牛乳を飲んでいた。やっぱりこれが一番だね!
「今更牛乳なんて飲んだって、胸は大きくならねぇよ」
「違うもん! そういうつもりで飲んでるんじゃないもん!」
みなもは半裸でタオルを首にかけた状態でくつろいでいた。風呂上がりのお父さんみたいだ。
私のパパはいつも風呂上がりに全裸で家の中を歩きまわるので、嫌でも視界に入る。合法ショタには似つかないモノをぶら下げていて私に見せつけてきた。その度にママにしばかれていたっけ。……凄く痛そうだったな。男の人の急所なのに……
きっとあれは私以外の女の子に男のシンボルを見せるなというママのパパに対する愛と独占欲からでた行動なのだろう。実にほっこりとしたエピソードだ。
「みなも『オーバーキル』の続き描こうか」
「今日はいいや、そんな気分じゃない」
何やらみなもがそわそわしている。まだ生理でもないだろうし、そうなると考えられる理由は一つしかない。
「ねぇみなも、もしかしてエッチしたくなってる?」
「さっき風呂であんな事したからな、ムラムラしちまったんだよ」
少し揉み過ぎたみたいだ。そういう私もあのキスでそういう気分になっていた。
「よし彩果、今夜は相手しろ」
「三日前にしたばかりだよ……」
「それが何だ、私は毎日でもしたりない」
「ケダモノ! 性欲の化身!」
「褒め言葉だな」
そう言って私をお姫様抱っこしてベットの上へと運んでくれた。みなもに抱き抱えられるのは、エッチの時だけだ。
「今夜は寝かすつもりないからなら覚悟しろよ」
「きゃーみなもに朝までエッチされちゃう! 助けてー!」
この芝居もいつもの事だけど、段々とそのゆとりがなくっていく。そして急激に不安になる私は、みなもに甘え始める。
「みなも……優しくてね」
「またこのやり取りかよ、するに決まってんだろ」
「みなも……好きだよ……」
「私もだよ……」
愛する人と裸で体を重ねる、みなもの体温が直に伝わってくる。熱を帯びて、快楽と共に。
私の愛は、熱と快楽に変えようかな……それも愛というものなのだろう。愛する人とでなければ、こんな事はやらないだろうし。
今私がみなもにされてる事がどんな事よりも愛と呼べるだろう。でもこんな光景、恥ずかし過ぎて誰にも見せられないな。絵に描こうと思ったけれど、やっぱりやめよう。この行為はみなもと私だけの秘密なのだから……
翌朝、あんなに威勢の良かったみなもは、途中で体力が尽きたのか、寝てしまっていた。
「……みなも、一晩中するつもりじゃなかったの?」
「うっせぇ……途中で疲れて寝ちまったぜ。つかお前の体力凄すぎだろ」
「えへへ、こう見えて体育会系ですから。まだまだいけたのにな」
「くっそ……何故か負けた気分だ」
ずっと家に居るから運動不足になっているのかもしれない。みなもの体力を付ける為に少し運動させた方が良さそうだ。
「でも彩果のネコちゃんぶりが見れて満足してるぜ。やっぱりお前は攻めるより受けの方がお似合いだからな」
「私の体中を舐め回してたよね。みなもの方が猫みたいだったよ。毎回思うんだけど、どんなプレイなの」
「ただの前戯だよ、私なりの愛情表現だ」
「次は私がしてもいい?」
「出来るものならやってみろ、どうせすぐへたれてネコになるのが目に見えてるけどな」
反論出来なかった。どうも私は本能的に受けにまわるのが好きみたいだ。新月にセクハラされ放題の時も嫌じゃなかったし。むしろちょっと嬉しかった。私は天性のマゾヒストなのかもしれない。
「喉渇いた、水汲んでくるね」
「おい裸でうろつくんじゃねーよ、せめて下着は付けろ」
「良いじゃん、自分の家なんだしさ。もしかして私の裸を見て、またムラムラしちゃった?」
「するに決まってんだろ」
「どうする? 朝からする?」
「いや……流石に今は無理だ。もうそんな体力がねぇよ、もう一眠りさせてくれ」
「じゃあ私も寝ようかな」
コップ一杯の水を飲んでから、私は布団に潜りこんだ。裸で寝ると風邪をひきそうだけど、今は梅雨だし、毛布を被っているし、何よりみなもの体温で暖かくて凄く居心地が良い、このまま寝てしまおう。
「みなも……愛してるよ」
「何だよ今更、私はその倍以上、彩果の事を愛してるよ」
「みなもー!」
「よしよし」
全裸で抱き合うみなもと私。慣れた事だけど、この瞬間が何よりも幸せだ。
私は今、みなもの愛を感じている。熱と心地良さを帯びて……




