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小さな足跡の記録  作者: こう
病院での日々
9/36

次回こそは

初めてNICUに入らせてもらった日は、指を握ってもらうので精一杯だった。

あまりにも小さな我が子を前にして、

「僕が抱っこしたら壊れてしまうんじゃないか」

そんな恐怖が勝って、手を伸ばすことすらできなかった。


妻はというと、毎日のように授乳練習をしているせいか、もう手慣れたものだった。

軽やかに我が子を抱き上げ、授乳室の方へ向かおうとする。


「お、おい。大丈夫か?」

「首をしっかり支えれば大丈夫だよ。だいたい抱っこできないと授乳できないでしょ」


ごもっとも。

ごもっともなんだけど、見ているだけでハラハラしてしまう。

授乳室へは父親は入れないので、空になった保育器の前で、ひとり待つことにした。


まだ吸う力が弱く、哺乳瓶で与えても少し飲んだだけで眠ってしまうと聞いていた。

どうか今日は少しでも飲めますように——そんな願いを胸に、時間が過ぎていく。


やがて戻ってきた妻の腕の中で、侑也は眠っていた。

「今日も、あんまり飲めなかったみたい」

妻がそっと言う。


「まだ小さいし、仕方ないよ。次また頑張ってもらおう」

そう言いながら、自分にも言い聞かせるように息を吐いた。


「パパも次は抱っこできるように頑張ろうね」


息子にだけ頑張らせるわけにはいかない。

僕は腹をくくった。


——次回こそは。

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