揺らぐ希望、迫る選択
ベビーカーでの注入を始めて四日目の夜中のことだった。
それまでは吐くこともなく、以前には見られなかった咳反射も出はじめ、うまくいっているように見えていた。
しかしその夜、急に高熱が出た。
夕方までは平熱だったのに、夜中に看護師さんが検温に来た時には、すでに39℃を超えていた。
周りが一気に慌ただしくなる気配に、妻も目を覚まし状況を把握する。
侑也には鼻の酸素カニューレが取り付けられ、夜中のうちに個室へと移された。
朝になり、検査の結果は――「肺炎」。
上がってくる量は減っていても、咳反射があっても、少量が肺に入り込めば肺炎を起こす。
せっかく掴みかけた希望が、音を立てて崩れ落ちていくようだった。
熱は三日間下がらず、侑也はぐったりしたまま。
座薬も効きが弱く、時々うなされている。
先生の判断で抗生剤が切り替わり、より強いステロイド剤が投与されることになった。
薬を変えた日の夕方、ようやく熱が下がった。
しかしその後もしばらくの間、侑也は目を開けたり、少し動いたりするだけで、ほとんどを眠って過ごした。
熱が下がって二日後には表情が戻ってきたが、ずっと付き添ってくれた妻の心労は計り知れない。
酸素の機械はついたまま。
本当の “元気” には、まだほど遠かった。
肺炎から一週間後、ようやく酸素を外すことができた。
鼻の横についたチューブをしきりに気にしていた侑也は、少しスッキリした顔をしていた。
まだ全快ではないが、笑顔も戻りつつある。
けれど、何度も繰り返す「肺炎」。
――これこそが、後日、僕たちに再び “選択” を迫る出来事となる。




