工夫が生んだ希望
侑也の食事姿勢について、先生と話し合った。
「侑也はお座りができない。だから寝た姿勢で注入するしかない。頭が低くなるから逆流しやすいのではないか?」
考えてみれば自然なことだ。
普通、食道と胃のあいだには逆流防止の弁(噴門)がついているが、侑也の場合はそこがうまく機能していない。頭の位置が下がれば、逆流してしまうのも当然だ。
では、どうするか。
ベッドの角度を上げても、元気な侑也はいつも通りベッドを横に使う。
枕を置いて頭を高くしても、ゴロゴロと転がって枕から落ちてしまう。枕の上でじっとしているのは、体調を崩しているときだけ。
どうしよう——。
悩んでいたとき、ふと目に入ったのがベビーカーだった。
「これなら…!」
食事中と食後しばらくの間、ベビーカーに座らせてベルトで体を支えれば、安定した“お座り姿勢”を保てる。
ズリズリ倒れることもない。これはいけるかもしれない。
期待を込めて試してみると、ベッドでの注入より咳が少ない。
これは…良い兆しだ。
その場にいたスタッフのあいだにも、一気に希望が広がった。
翌日、管の入れ替えが行われた。いつもより短い時間で終わり、侑也もご機嫌だ。
先生に何か話しかけている様子はまるで——
「上がってくる量、減ってきましたよ? そろそろ量を増やしても良いんじゃないですか?」
そんな交渉をしているようにすら見え、自然とみんな笑顔になった。
この方法でうまくいってくれたら——。
飲み込まれそうになる不安の濁流の中に、確かな“希望の足場”がひとつ生まれた。




