静かに忍び寄る影
4月30日。
この日、痙攣が再発した。
月曜ということもあり、僕は仕事で家にはいなかった。
帰宅するなり、妻が真剣な顔で口を開いた。
「朝から様子がおかしいの」
話を聞くと、いつもより静かだと思った矢先、侑也は1人で「指の研究」を始めていたらしい。
「楽しく遊んでいるんだ。良かった」
そうホッとしたのも束の間だった。
侑也の黒目が、スッと上にのぼっていき──白目になりかけた。
妻の胸が凍りついたその瞬間、黒目はクルンと戻り、
侑也は何事もなかったかのように「指の研究」を再開したという。
「いまのは……けいれん?」
そう思っても確信が持てない。
この状態で病院へ行っても、前回と同じ結果になる──そう感じた妻は、しばらく様子を見ることにした。
その後も一日を通して同じような症状が数回起きたが、いずれもすぐに戻ってしまう。
妻は混乱し、どうしていいか分からなかったという。
僕も話を聞いて言葉を失った。訪問看護師さんに連絡すると、
「今なんともないのなら、様子見を続けてください」
との返答だった。
病院へ行けば、また「動画を撮ってください」と言われるだけかもしれない。
しかし動画に残すには症状があまりにも一瞬すぎる。
何かが起こっている。それだけは確かだ。
翌日からはGWに入る。
休みの間に何か起きたら……という不安はある。
でも逆に言えば、連休中は侑也をじっくり観察できる。
「何か前触れがあるのか、何もなく急に来るのか。
それだけでも先生の助けになる」
そう話し合い、その日の結論とした。
まだ呑気に「指の研究」を続けている侑也。
その姿を見つめながら、不安に飲み込まれず、
目の前の“守るべきもの”を見失わないと心に決めた。




