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小さな足跡の記録  作者: こう
新たな恐怖 原因不明の不安

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76/134

読んでますけど、何か?

4月の頭。

原因不明の痙攣から一週間、侑也は嘘のように何事もなく過ごしていた。


訪問看護師さんにも状況を共有し、注意深く様子を見ているものの、当の本人は今日も元気いっぱい。コロコロ転がっては管に絡まり、


「助けて〜」


と、いつものように声をあげている。


あの夜の恐怖を思い出すと胸がざわつくが、

——何事もないなら、それがいちばんだ。

そう夫婦と看護師さんで確認し合っていた。


最近の侑也は、両手で物を持つのが上手になってきた。

サークルを覗き込んでみると、赤ちゃん新聞を両手で広げ、顔の前に掲げている。


まるで読んでいるかのように「フムフム」と頷いているのだが——

よく見ると新聞が上下逆だ。

その姿がおかしくて、思わず妻を呼んで写真を撮った。

侑也もこちらに気づいたのか、


「何か用?」


と言いたげに、不思議そうな顔で見上げてくる。


笑いながら覗き込む僕たち夫婦。

こんな何気ない時間が、いつまでも続けばいい。


春の午後に、そんな願いがふっと胸に浮かんだ。

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