侑也の初めてのマイ補聴器
3月の半ば頃。
侑也は久しぶりに、難聴児支援施設へ耳の検査に出かけた。
耳の検査のときは、僕も休みを取って必ずついて行くことにしている。
この日も検査は無事に終わり、先生から総評を聞いた。
「補聴器にもだいぶ慣れてきて、音への反応がどんどん良くなっています。そろそろ侑也くん専用の補聴器を作ってもいい頃かもしれませんね」
今まではお試しの補聴器を調整しながら使ってきた。
イヤーモールドだけは専用のものを使っているが、とうとう“本体”も侑也のためのものを作る時が来た。
補聴器は色を選べるらしく、しかも部品ごとに色を変えてツートンカラーにもできるという。
侑也には、どの色が一番似合うだろう……?
ここで困るのが僕たち夫婦の欠点である 決断力のなさ。
「あれもいい」「これも似合う」
言い出すとキリがない。
(余談だが、結婚式のお色直しのドレスも、結局妻の妹・弟の一言で決まったくらいだ。)
ひとまずパンフレットを持ち帰り、家でゆっくり考えることにした。
「家に持って帰ったからって、決まるかな?」
そんなことを言いながら帰宅したのだが……
案の定、家に帰っても決まらない。
「侑也がずっと使う物だからな。カッコよくて似合うものにしてやらないと」
そう言い合いながらパンフレットをめくり、また迷う。
そして──ついに決める時が来た。
「……もう、これにしよう」
最終的に、パンフレットに載っていた見本の色に決めた。
いわゆる マネキン買い である。
今までの迷いの時間はなんだったのか……。
青をベースに、イヤーモールドは透明。
左右で色も変えないシンプルスタイル。
シンプル・イズ・ベスト。
こうして、侑也の補聴器は発注されることになった。




