鏡の中の友達
離乳食の訓練を始めた侑也。
小さなお口に小さじ1杯のお粥を、何口にも分けてそっと運ぶ。
慎重に…慎重に…。
そう何度も自分に言い聞かせながら、少しずつ与えていった。
最初は「なんだこれ?」と言いたげに舌で押し出していたけれど、数回やるうちに飲み込むことができるようになってきた。
——口から食べるということを、思い出してきたんだ。
嬉しさを胸にしまい込みながら、ほんの少しずつ与える。
いつか“お腹いっぱい食べられる日”が来ることを信じて。
3月に入ると、侑也はますます元気いっぱい。
動き回るたびに経管栄養ボトルを倒してしまうので、僕たちは思い切ってベビーサークルをレンタルすることにした。
行動が制限されてしまうのは気になったが、管が絡まって抜けたり、物干し台が倒れて怪我をするよりはずっと良い。
そう判断した。
届いたサークルを侑也の遊び場に設置すると、壁に付いている鏡やおもちゃに興味津々。
特に鏡はお気に入りで、
「お前は誰だ?」
と言っているかのように、鏡に向かってよく声をあげていた。
サークルのおかげでボトルを倒すことは減り、絡まって「助けて〜」となる頻度は相変わらずだが、怪我の心配が減ったのは大きい。
そんな中、妻が言う。
「このサークル、ネットにもあるんだって。ボールが百個ついてて、ボールプールにもできるみたいよ」
その言葉を聞いた僕は、迷うことなく購入ボタンを“ポチッ”。
ボールプールはまだ早いかもしれない。
でもきっと、いつか楽しんでくれるはずだ。
侑也の成長を信じながら、届いたボールはクローゼットへとしまわれていった。




