侑也 消える!?
退院して我が家が落ち着きを取り戻し、やっといつもの生活が戻ってきた頃、ちょっとした事件が起きた。
それは、なんでもない平日の夜のこと。
仕事から帰った僕はリビングで侑也と遊び、寝る時間になったのでベッドへ連れて行った。
この頃にはベビーベッドを卒業し、僕たち夫婦の間で眠るようになっていた。
ちゃんと寝息を立てているのを確認してから、経管栄養ボトルを吊り下げ、僕はお風呂へ。
妻は台所で、注入セットを消毒したり洗い物を片づけたりと大忙しだ。
風呂から上がると、侑也の様子を見に寝室へ向かった。
ベッドを横に広々と使う癖があり、僕たちの寝る場所を遠慮なく奪ってくるので、そっと戻さないと僕らが寝られなくなる。
そっと覗くと――あれ?
「侑ちゃん、いないよ?」
台所の妻にも聞こえるように声を上げる。
「え〜?そんなはずないでしょ?寝てるよ?」
再びベッドを見るが……やっぱりいない。
どこへ行った?
僕たちは夫婦で捜索を開始した。
といっても、繋がっている管をたどるだけなのだが。
経管栄養ボトルから伸びる管を追いかけていくと――いた!
ベッドと壁の隙間に、コロリと転がり落ちている。
「侑ちゃん!大丈夫!?」
思わず大きな声で呼びかけると、侑也は……笑ってる?
狭い隙間に入り込み、その不自由さすら楽しんでいるかのようにニコニコしている。
引っ張り出そうとすると、もっと居たかったのか抵抗する始末だ。
「侑ちゃん、怪我はない?見せて」
幸いにも、どこにも傷はなく、管も抜けていない。
ホッと胸を撫で下ろす僕たちをよそに、救出された侑也はさっそく指の研究に没頭し始めた。
この奔放さ、誰に似たんだろうか。
ひと騒動のあと、もう落ちないようにベッドをしっかり壁へくっつけ、家族3人で川の字になって眠った。
動き回るのは元気な証拠。
でも……勝手にいなくならないでね。
そう願いながら、夜は静かに更けていった。




