帰る場所へ
入院して13日目、ついに退院の日を迎えた。
迎えに行くと、妻は帰り支度の真っ最中。
前回に比べれば短い入院だったおかげで、荷物もだいぶ少ない。
ベビーカーに荷物を載せて車まで運び、一度戻ると、
侑也の部屋で妻が看護師さんと笑いながら話していた。どうやら退院の挨拶らしい。
「侑也くんが元気になって退院するのは、ほんま嬉しいんよ〜。
でもね、やっぱりちょっと寂しくなるわ〜」
妻も笑って答える。
「入院生活、トータルすると長いですからね。
侑也、ここを別宅と思ってるかもしれませんよ」
……本当にありえそうだ。
生まれてから4ヶ月、肺炎で3ヶ月、今回2週間。
計算すれば、家と病院がほぼ半々。
我が家の立場、危うい。
廊下に出てスタッフステーションへ挨拶に行くと、
そこにいた看護師さんたちが次々と顔を出し、
侑也に「バイバーイ!」と手を振ってくれた。
侑也も「また来るね〜」と言わんばかりの満面の笑顔。
……いや、できれば“また来る”は回避しような。
帰りの車の中で、僕は後部座席の侑也に向かって話しかけた。
「侑ちゃん、病院はね。しんどい、つらいってなった時にだけ泊まりに行くところなんだよ。
チックンも痛いしな?なるべく行かない方がいいんだよ」
聞いているのかいないのか、侑也は指の研究に夢中。
それでも、家族3人の生活に戻れる喜びだけは確かに胸にあった。
明るい陽の差す、我が家——侑也にとっての「もう一つの別宅」へと、僕たちは帰った。




