工夫と笑顔
実家での暮らしは十日ほど。
十二月十七日、妻と侑也は我が家へ帰ってきた。
妻の精神状態も落ち着いてきているようで、少し安心した。
侑也の注入時間に合わせて家事をこなす姿が、生き生きとしている。
病院での追い詰められた顔を思い出すと、それだけで幸せな気持ちになった。
侑也は実家でも、我が家でも変わらない。
ゴロゴロと探検して回ったり、指の研究を続けていたり——いつも通りだ。
訪問看護師さんも、地元のステーションに変わったが、引き続き来てもらえることになった。
月曜から金曜まで、毎日一時間ほど居てくれる。
お風呂に入れてくれたり、健康状態のチェック、妻の相談相手になってくれたりもする。
僕は普段仕事で家にいないので、本当に助かっている。
ただ、侑也のお風呂が少し問題になってきた。
ベビーバスを使っていたのだが、もう小さくなってきたようだ。
下に置いて入れると腰も痛い。どうしようかと悩んでいたところで、通販サイトである物を見つけた。
幅一二〇センチほどの透明なナイロンシート。百メートル巻きで売っていた。
さっそく取り寄せ、適当な長さに切って、キッチンシンクに磁石で貼り付ける。
そしてお湯を溜めると——
シンク風呂の出来上がりだ!
これなら高さがあるので腰も痛くない。
大きさもベビーバス並みにはあるので、侑也もなんとか入れる。
ビニールも干しておけば再利用できる。
看護師さんにも「腰が楽になった」と喜ばれた。
侑也も満足そうだった。
きっともっと大きくなればまた困るだろうけど、しばらくはこれで大丈夫だろう。
お湯の音と侑也の笑い声が、今日も家の中に響いていた。
工夫と発想があれば、これからもなんとかやっていける——そう思えた出来事だった。




