変わらないもの
検査の結果を受けて、侑也は再び鼻からの注入に戻ってしまった。
検査の2日後には、また軽い肺炎を起こしてしまう。
調子が良い時はベッドの上をコロコロと転がって遊び回る侑也だが、しんどくなるとピタッと動きを止めてしまう。見ていてすぐに分かる。
だが、我が子が苦しそうにしている姿ほど、胸が締め付けられるものはない。
――どうにか代わってやりたい。
小さい頃に熱を出したとき、よく親にそう言われていた。その時はただの言葉として聞いていたが、いまなら痛いほどわかる。
入院中ということもあり、適切な処置を受けた侑也は2日ほどで元気を取り戻した。
しかし次に問題となったのは、退院後の生活だった。
難病指定されている「コルネリア・デ・ランゲ症候群」と診断されたことで、自宅では訪問看護をお願いできるようになった。
お風呂介助などの支援ももちろん助かる。けれど、一番大きかったのは――
「病院へ行くほどではないけれど、心配なとき」
に相談できる相手ができたことだった。
僕たちの親族の中に、医療的ケア児の子育てを経験した人はいない。だからこそ、看護師さんの存在は大きな支えになった。
吸引の手技も病院で練習し、自宅に吸引器を設置していつでも対応できるようにしなければならない。
誤嚥を防ぐために必要なこととはいえ、侑也は「また鼻の中グリグリするのか!」とでも言いたげに嫌がる。
していない時は満面の笑顔を向けてくれるのに、その笑顔を曇らせてしまうのが切なかった。
周りの人たちは「大変だね」と言う。
でも、僕たちは侑也を特別な存在とは思っていない。
どの子にもできること、できないことがある。
侑也にはただ、経管栄養と吸引というケアが必要なだけだ。
それも含めて、この子の「日常」なのだ。
診断や手術を経て、「変わってしまった」ことはたくさんある。
それでも――「変わらないもの」も、確かにある。
その「変わらないもの」を見つめながら、
僕たちは少しずつ、退院へ向けての準備を整えていった。




