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小さな足跡の記録  作者: こう
日々の暮らしの中で
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この日を迎えられて

8月8日 侑也の1歳の誕生日だ。

思い返せば色々あったなぁ。と撮りためておいた写真を見直す。侑也も膝の上でご機嫌だ。


「こんなに小さかったのにな」


産まれたての写真と見比べると、ずいぶん大きくなったことを実感する。

得意だった左手をあげるポーズも、いつの間にかしなくなっていた。


「何かを掴みたかったの?」


侑也に聞いてみるが答えはない。代わりにドーンと反り返りが来るぐらいだ。

4ヶ月にも及ぶ長い病院生活の中で、僕が映っている写真は全て同じTシャツを着ている。

懐かしい抱っこ用ユニフォームだ。妻の服は変わっていっているのに、僕だけ季節感がない。


「この頃はユニフォームにこだわって、今日は着てないから抱っこできないとか言ってたよね」

妻が横から声をかけてくる。


「今はいつだって出来るぞ! ほら」


と、侑也を抱き上げてグルグル回ってやると、ご機嫌にニコニコしている。


退院時の記念、うつぶせになって頑張っているところ、マットの上で寝てしまってほっぺにマットの跡が残ってしまった写真──

一枚一枚に侑也の成長を感じながら、当時を思い返す良いきっかけになった。

日々の積み重ねも、思い返せばあっという間だったな。

つくづくそう感じた。


夜になり、侑也に誕生日ケーキを見せてみる。

見たこともない食べ物かも分からない物に、ちょっと興奮気味だ。


「なんだ?これ」


とでも言いたげな顔をしながら手を伸ばしていた。

スプーンですくって一口ペロっと舐めさせてみる。

目を丸くする侑也。初めてのケーキの味に驚いたのだろう。

声をあげて暴れるように喜んでいた。

あまり多くも食べさせてあげられないのが残念だ。

来年は一緒に食べられることを願った。


この日を迎えられて、ただそれだけで十分だった。

あの日、当たり前のように誕生日を迎えられることが、どれほど尊いことかを知った。

侑也の笑顔に出会えた一年。

僕たちにとっても、忘れられない一歳の誕生日になった。

侑也君 誕生日おめでとう!

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