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小さな足跡の記録  作者: こう
日々の暮らしの中で
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成長の形

7月に入り、梅雨も明けて世間は「夏が来た!」と騒いでいた頃、侑也は暑さにも負けず、ゴロゴロと転がりながら行動範囲を広げていた。最近は寝返りから自力で戻ることにも成功するようになってきた。とはいえ、まだ数回に一度の確率だが、それでも大きな成長だ。


補聴器をつけている時間も少しずつ長くなり、音を楽しんでいるようにも見える。

赤ちゃん新聞を目の前でクシャクシャと音をたてると、興味津々の表情でこちらを見つめてくる。

「あー、あー」

もう一回、もう一回とせがまれているようで、つい何度も鳴らしてしまう。渡してもすぐに捨てられてしまうのだが、目の前で音が鳴るのが楽しいのだろう。


そんな頃から、補聴器がポロポロと外れるようになった。最初は「つけ方が悪いのかな?」と思っていたが、どうも違う。キィーンというハウリングの音も聞こえる。施設での検査の際、思い切って相談してみた。


「これは、侑也くんの耳が成長して、イヤーモールドに隙間ができているんですね。作り直す必要がありそうです」


機械の故障だと思っていたので、そう聞いて驚いた。

毎日一緒に過ごしていると、体の変化にはなかなか気づけない。けれど、確かに大きくなっている。その成長が、こんな形で証明されるとは思ってもみなかった。


2度目のイヤーモールド作り。最初のときと同じく、侑也は指の研究に夢中の間にあっさりと終わった。いつもながら動じない姿に、ちょっと尊敬の念すら覚える。

まあ、鼻をつつくと火がついたように怒るのは相変わらずなのだが。


新しいイヤーモールドが完成するまでは、今のまま補聴器を使い、ハウリングがひどいときは外すことにした。

「気づかない間に大きくなってたんだな」

帰り道、侑也にそう話しかけると、相変わらず動けば喜び、止まれば不機嫌。

「やっぱ変わってないかも」

そう冗談めかして言うと、少しだけ不機嫌な顔をされた。


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