検診と図書館
侑也が補聴器をつけ始めて、しばらくした頃。
役場で保健師さんとの面談を含めた検診があった。侑也の成長の様子を確認するためだ。
役場に着くと、同じ年頃の子どもたちがたくさん集まっていた。
十か月ともなると、みんなずいぶんしっかりしてきている。
比べるつもりはなくても、つい侑也と見比べてしまう。
お座りをして楽しそうに遊ぶ子たちを見ながら、
「侑也も、いつかできるようになるよな?」
と声をかける。
しかし侑也は、相変わらず指の研究に夢中で、まさに“我関せず”といった様子。
そのいつも通りのマイペースっぷりに、こちらもふっと肩の力が抜けた。
検診の結果は、やはりできることが少なく、保健師さんに心配されるほどだった。
けれど、侑也なりにちゃんと成長している。
他の子にできて、侑也にできないことがあったとしても、それはそれでいい。
そう思うことにした。
帰りに、役場に併設された小さな図書館に立ち寄った。
侑也はまだ物語に興味を示さないが、絵を見るのは大好きだ。
妻が文字より絵の多い本を選び、隣で読み聞かせる。
僕の膝の上でおとなしく絵に集中している侑也の真剣な表情を見ていると、
検診で言われたことなんて、どうでもよく思えてくる。
ただ、膝の上でお座りしていると、ときどき侑也は急に後ろへ反り返ってくる。
ちょうど僕のみぞおちの位置だ。
油断して食らうと、しばらく息ができないほどの勢い。
本人は無邪気に笑っているが、このクセはなんとかならないものだろうか。
「今度、リハビリの先生に相談してみよう」
そう呻きながら、僕はみぞおちを押さえた。




