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小さな足跡の記録  作者: こう
はじまりの日

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名前の夢

医療センターでの検査が続く中、僕は仕事の合間や家で、ひとり静かに子供の名前を考えていた。

手には命名辞典と漢和辞典。あれこれ調べては「うーん、違う」と寝室を行ったり来たり。

納得のいく名前はなかなか見つからない。


その日の昼下がり、妻はリビングで洗濯物をたたみながらお腹に話しかけていた。

「チビちゃん、早く大きくなってね」

僕たちの間でそう呼んでいた、まだ見ぬ我が子に向けた優しい声。

僕は寝室で辞書を広げたまま、考え続けていた。

気づけばいつの間にか眠ってしまっていたらしい。目を覚ますと、目の前に小さな男の子が立っていた。

年の頃で五歳ほどだろうか。

ターッと走ってきた子は、にっこり笑いながら言った。


「パパ!僕、侑也がいい」


そして、すぐに廊下の方へ走り去って行った。

一瞬、ぼんやりとその背を見送る僕。けれど、確かに聞いた。

侑也――その声は小さくとも、はっきりと耳に残った。


慌てて妻の元へ駆け寄り、夢に出てきたことを伝える。

妻も驚いた顔をしたが、すぐにお腹に向かって声をかけた。

「きっとこの子が自分のつけてほしい名前を伝えに来たんだね。あなたは侑也君、そうなんだね」


その瞬間、僕は胸の中でほっと安堵し、同時に小さなワクワクが込み上げてくるのを感じた。

まだ生まれていない我が子が、自らの名前を告げてくれたような気がした。

その夜、再び寝室に戻り、僕はそっと目を閉じた。夢で見たあの男の子の笑顔が、ずっと頭の中に残った。


余談だが、そのあと金髪で色白の別の子供が夢に現れ、違う名前を告げたこともあった。

「おじさん!僕の名前はシュナイダーがいい!」

さすがにこれは却下された。だが、夢という不思議な形で息子との最初の出会いを経験した日だった。


こうして、僕たち家族にとっての最初の大切な決定――名前が、静かに、そして確かに決まった。

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