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小さな足跡の記録  作者: こう
日々の暮らしの中で
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首がすわる日と、父の余計な行動

定期の通院で運動リハビリを受ける侑也。

この日も診察のあと、どのくらい動けるようになったかを見てもらうことになった。


担当の先生にも、いつものようにニコニコと笑顔を振りまく。

「こんにちは。今日も一緒に遊んでくれるの?」

まるでそう言いたげな顔で先生を見上げる。


「侑也くん、今日も頑張ろうね」

そう声をかけられると、先生の手が優しく侑也の体を包む。

背中や腰をほぐしてもらいながら、気持ちよさそうに目を細めている。


体を屈伸させて柔らかさを確かめたり、軽いおもちゃを持てるか確認したり。

寝返りのテストでは、横を向くのがやっとで、下になった左腕が抜けずに苦戦していた。

けれど、侑也は終始ご機嫌で、まるで遊んでもらっているかのように笑顔を絶やさない。


うつ伏せになって頭を持ち上げるテストでは、思いのほかやる気を見せた。

両肘をついてグッと頭を上げ、そのまましっかりと留めることができた。


「おお!すごいすごい!がんばれ、がんばれ!」

夫婦そろって声を上げて応援する。

しばらくがんばったが、やがて「もう無理!」とばかりにバタッと頭を落とす。

それでも、今までの最長記録を更新したようだ。


「どうやら首は座ったようですね」

先生の言葉に、夫婦で顔を見合わせる。

「やったな、侑ちゃん!よく頑張ったな!」

抱き上げた侑也も、どこか誇らしげな表情をしていた。


その夜は、初めて一緒にお風呂に入った。

ベビーバスを卒業し、僕と同じ湯舟に浸かる。

今日の頑張りを褒めながら体を洗っていると、ふと気になることがあった。


侑也は産まれた時から産毛が濃く、額のあたりまでびっしりと生えている。

眉の上まで伸びる細かな毛が、まるで前髪のように額を覆っていた。

眉毛も少しつながっていて、顔全体が少し陰って見える。

「剃ってあげたら、もう少しスッキリするかもしれない」

そんな軽い気持ちで、T字のカミソリを手に取った。


チョリチョリと音を立てながら、額の産毛を剃っていく。

剃り終わると、さっきまでの幼い顔が少し大人びて見えた。

「侑ちゃん、なんか変わったと思わない?」

風呂上がりに迎えに来た妻に言うと、

「なんかスッキリしたね。どうしたの?」

「産毛、剃ってやった」


侑也も気に入ったのか、ニコニコと笑っていた。

その笑顔を見て、僕も思わず笑ってしまった。

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