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小さな足跡の記録  作者: こう
日々の暮らしの中で

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20/42

新年の出会い

 年が明け、年始の挨拶のために今度は妻の実家へと家族で向かう。車で十数分の距離だが、侑也にとっては初めての道のりだ。

 前回の外出で車が気に入ったのか、走っている間はご機嫌だが、信号待ちなどで止まるとすぐに不機嫌になる。

「これはルールだから、許してね」

 妻が笑いながら声をかけると、またすぐに機嫌を直す。どうやら本当に車が好きらしい。


 妻の実家に着くと、リビングの窓際には飼い犬の「ミッキー」が寝そべっていた。僕たちが入ると、クンクンと鼻を鳴らして近づいてくる。

「そういえば、侑也とは初対面だな。大丈夫か?」

 妻にだけ聞こえるように囁く。しかし、その心配は杞憂だった。

 侑也を寝かせると、ミッキーはそっと近づき、匂いを確かめるように顔を寄せ、そのまま侑也の隣に寝そべった。まるで、守るように。

「危ない、踏むなよ」

 と声をかけると、〈そんなことしないよ〉と言いたげにチラリとこちらを見上げた。


 そこへ妻の祖母、侑也から見れば“ひいばあちゃん”が現れた。

「よう来たなあ」

 と笑顔で声をかけ、そのまま侑也のもとへ。侑也も人見知りせず、満面の笑みを返す。

「おお〜、かわいいのう」

 曾祖母は薄いハンカチで侑也の顔を隠しては、「ばあ!」と笑いながら顔を見せる。そのたびに侑也はキャッと声をあげ、部屋の空気が柔らかくなる。

 どうも侑也より、曾祖母の方が楽しそうに見えたのは僕だけだろうか。


 妻の両親や妹弟たちにも順番に抱っこされ、まるで奪い合いのようだ。それでも侑也は誰の腕の中でもニコニコと笑っている。ミッキーはそのたびに心配そうに近寄り、見守っていた。

「落とすなよ」

 もしかすると、本当にそう言っていたのかもしれない。


 帰りの車の中、侑也はすぐに眠りについた。

 小さな胸がゆっくりと上下している。

 今日もたくさんの笑顔を見せてくれてありがとう。

 侑也君、本日はお疲れ様でした。

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