新年の出会い
年が明け、年始の挨拶のために今度は妻の実家へと家族で向かう。車で十数分の距離だが、侑也にとっては初めての道のりだ。
前回の外出で車が気に入ったのか、走っている間はご機嫌だが、信号待ちなどで止まるとすぐに不機嫌になる。
「これはルールだから、許してね」
妻が笑いながら声をかけると、またすぐに機嫌を直す。どうやら本当に車が好きらしい。
妻の実家に着くと、リビングの窓際には飼い犬の「ミッキー」が寝そべっていた。僕たちが入ると、クンクンと鼻を鳴らして近づいてくる。
「そういえば、侑也とは初対面だな。大丈夫か?」
妻にだけ聞こえるように囁く。しかし、その心配は杞憂だった。
侑也を寝かせると、ミッキーはそっと近づき、匂いを確かめるように顔を寄せ、そのまま侑也の隣に寝そべった。まるで、守るように。
「危ない、踏むなよ」
と声をかけると、〈そんなことしないよ〉と言いたげにチラリとこちらを見上げた。
そこへ妻の祖母、侑也から見れば“ひいばあちゃん”が現れた。
「よう来たなあ」
と笑顔で声をかけ、そのまま侑也のもとへ。侑也も人見知りせず、満面の笑みを返す。
「おお〜、かわいいのう」
曾祖母は薄いハンカチで侑也の顔を隠しては、「ばあ!」と笑いながら顔を見せる。そのたびに侑也はキャッと声をあげ、部屋の空気が柔らかくなる。
どうも侑也より、曾祖母の方が楽しそうに見えたのは僕だけだろうか。
妻の両親や妹弟たちにも順番に抱っこされ、まるで奪い合いのようだ。それでも侑也は誰の腕の中でもニコニコと笑っている。ミッキーはそのたびに心配そうに近寄り、見守っていた。
「落とすなよ」
もしかすると、本当にそう言っていたのかもしれない。
帰りの車の中、侑也はすぐに眠りについた。
小さな胸がゆっくりと上下している。
今日もたくさんの笑顔を見せてくれてありがとう。
侑也君、本日はお疲れ様でした。
 




