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小さな足跡の記録  作者: こう
病院での日々

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ようこそ我が家へ

11月16日、生後百日をGCUで迎えた侑也。体重は3500gを超え、暴れる力も強くなっていた。


しかし、チューブの入れ替えの訓練は相変わらず上手くいかない。反対側の鼻の穴から出てきてしまったり、口の中で団子状になってしまったり。時間がかかれば侑也にも負担になると分かってはいるが、なかなか上手くいかない。最近は鼻に触ろうと手を伸ばすだけで怒るようになった。


「侑ちゃん、ごめんね。」


そんな折、先生から退院の目途について話があった。


「年内にはお家に帰れるようにしてあげたいですね。12月10日に退院する方向で調整していきましょう。それまでにご両親も頑張って覚えてくださいね。」


退院まで、約3週間。ついさっき行ったチューブの交換も上手くいかず、連れて帰って大丈夫なのか不安がよぎる。しかし、やるしかないのだ。


さらに、先生は聴力の精密検査についても説明してくれた。


「簡易検査で問題があるようですので、近くの専門の耳鼻科をご紹介します。退院後、そちらで受けていただくことになります。」


麻酔の件で少し病院不信になっていた僕は確認する。


「精密検査で実は問題なかった、ということはありますか?」


「例がないわけではありませんが、音域ごとの聞こえを把握することで、今後の日常生活に影響があるか判断できますよ。」


なるほど、精密検査次第か。そう思い、その場は納得することにした。


退院が決まったことで、看護師さんの指導もさらに熱が入る。機会があれば、侑也のお世話の全てを任されるようになっていった。


「困ったことがあれば、いつでも電話してきてね。ここは24時間対応だから。電話で連絡してくれたら、すぐにこっちにつなげるように言っておきますから。」


ベテラン看護師さんの温かい言葉に励まされながら、12月10日。侑也は生まれて初めて外の世界へ踏み出した。


寒いだろうと起毛の服を着せ、おくるみにくるまれ、僕の抱っこでお世話になった皆さんに見送られながらGCUを後にする。


病院の外に出ると、冬とは思えない程の温かい日差しが降り注いでいた。侑也は眩しそうに手で目を隠す。


「侑ちゃん。これが外の世界だよ」


声をかけながら、ゆっくりと車へ向かう。陽の光も、抱っこでの長距離移動も、侑也にとっては初めて尽くしだ。


車に着くと、ついにチャイルドシートの出番。出産前から準備していたものの、産まれてから4カ月も使う機会がなかった。


「待たせたな」


と、つい声をかけてしまう。チャイルドシートに侑也を乗せると、ぴったり収まり、おくるみをかけて出発。道のデコボコも初体験で、侑也は驚き、大泣きし始めた。


帰り道、紹介された耳鼻科へ立ち寄り、精密検査の説明と予約を済ませる。病院内は温かく、侑也も寒くないだろうと一安心。


そして、いよいよ我が家へ。


「ようこそ侑ちゃん。今日からここが君の家だよ」


玄関を開け、侑也を迎え入れる。ベビーベッドに寝かせ、おくるみを外すと、服の下はびっしょり濡れていた。まるでおもらしをしたかのようだが、オムツは濡れていない。


「侑ちゃん!もしかして暑かった?」


厚着のまま診察を受けたことが仇となったようで、帰宅初日に親としての未熟さを痛感する一幕となった。

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