1/36
はじまりの日
実話を元に校正した物語です
良ければお読みください
あの日、妻の小さなお腹を見つめながら、僕はまだ知らなかった。
その中にいる“命”が、僕たちの人生を大きく変えていくことを。
あれがすべての――はじまりの日だった。
初めての子どもということもあって、検診の日はいつも夫婦そろって病院へ行っていた。
六か月目までは「少し小さいけれど問題ないでしょう」と言われていたのに、七か月目の検診で先生が険しい顔をして言われた。
「前回から赤ちゃんの成長が止まっています。すぐに大きな病院を紹介します」
初めての経験で、僕たちは深刻さをまだ理解できず、待合室で「いつ行こうか?」「次に休める日いつだっけ?」なんて話していた。
その時だ。
ベテランの看護師さんがツカツカと近づいてきて、真っ赤な顔で大きな声を上げた。
「赤ちゃんのことなんですよ! 何かあったらどうするんですか! すぐに行きなさい!!!」
その言葉でようやく現実に引き戻され、僕たちはその足で隣町の医療センターへ向かうことになる。
――あの日が、今後何年にもわたってお世話になる病院との、最初の出会いの日だった。




