第9話「実験村の真実」
最近忙しくて投稿できませんでした。
その夜、俺とエリナは村の外れの森に向かって歩いていた。村の中心部にはあまり近づけない雰囲気が漂っている。それに、村人たちの様子もおかしかった。さっきまで自由に話していた村人たちが、急に静まり返り、誰もが自分の家に閉じこもってしまった。まるで、何かを恐れているかのようだった。
「どうして、村の人たちはこんなに気を使うんだろう?」
「わからないけど、何かしらの理由があるんだろうね」
エリナが不安そうに呟くと、俺は彼女に軽く肩を叩き、少しでも安心させようとした。
「怖がるな。あれだけの騒ぎを起こしたんだ。何かしら手がかりを得られるかもしれない」
俺たちは森の中を進みながら、エリナのステータスウィンドウを確認していた。彼女の覚醒率が上がるごとに、何か変わるのではないかと期待していたが、ウィンドウには特に新しい情報は表示されていなかった。
「このままでは、何も進まないよね」
エリナがつぶやいたその瞬間、森の奥から微かな音が聞こえてきた。
「何だ?」
「気をつけて。音がする」
俺たちは音のする方向へ慎重に進んだ。しばらく進むと、そこには小さな小屋が建っていた。見るからに古びた小屋で、周囲には誰もいない。
「ここ、どこかで見たことがあるような……」
エリナがつぶやくと、俺もその言葉を無意識に受け入れていた。確かに、この小屋には見覚えがある。しかし、どこで見たかは思い出せない。
「とにかく、行ってみよう」
俺はエリナの手を引き、そっと小屋の扉を開けた。中には、薄暗い空間といくつかの古びた棚が並んでいた。棚の上には、埃をかぶった書類や小物が無造作に置かれている。
「ここは……実験に関するものが置かれている場所かもしれない」
俺はすぐにその場所がただの倉庫ではないと直感した。エリナと一緒に棚を調べていると、ある一冊の本が目に留まった。
「これ、さっきの帳簿と同じだ」
その本には『実験村03:最終段階』と書かれており、そのタイトルが俺を更に驚かせた。
「最終段階……?」
エリナが一歩後ろに下がり、恐る恐るその本を開く。
「おい、エリナ!」
俺が急いで本を取り上げると、ページが開かれ、そこには詳細な記録が残されていた。
『実験村03は、異常な覚醒を促すために設置された仮想世界の一部である。対象となる者は、記録が削除されることなく、覚醒を果たすか、消失する。最終段階では、個体のデータは最適化され、実験結果に基づいて改良が施される。』
「つまり、俺たちは実験体だってことか?」
俺の声が震える。それを証明するように、エリナも目を見開き、息を呑んだ。
「実験体……そう、実験体。すべてはデータの一部だったのね」
「この村も、俺たちも。全てが管理され、試験されている」
俺は思わず本を閉じる。ページをめくることが恐ろしい気がしてならなかった。
「じゃあ、消されてしまう人たちって……」
「覚醒に失敗した、もしくは覚醒できなかった人たちだろう。だから、消えるんだ」
俺の手が震え、胸が締めつけられるような思いがした。だが、俺はエリナの目を見る。彼女の目には不安と共に決意が宿っている。
「カズマ……私、もう逃げたくない。何があっても、この村の秘密を明らかにする」
その言葉に、俺は深く頷いた。
「俺もだ。絶対に、この実験の真相を暴いてやる」
その瞬間、外から音がした。誰かが近づいてきた音だ。
「誰だ?」
「逃げる準備をしろ」
急いで本を棚に戻し、俺たちは小屋を出て、再び森の中を進んだ。だが、心の中で確信があった。何かが動き始めた。これから先、俺たちはただの実験体として消されるわけにはいかない。