第7話「救世主と呼ばれて」
6話に編集を加えました
朝、陽が昇ると同時に村の中央広場はざわついていた。昨夜の魔物の死体が道の片隅に転がり、村人たちは興奮気味にその様子を語り合っている。
「おい見たか? 首が真っ二つだ!」「何者かが一撃で……」
「誰が助けてくれたんだろうな? まさか神の加護か?」
村の中はちょっとした“救世主フィーバー”状態になっていた。
当の本人、つまり俺は村の裏手に身を潜めて朝食代わりのきのこをかじっていた。……見た目は怪しいが、毒チェック済みだ。
「とんでもない騒ぎになってんな……まさか一晩で伝説扱いとは」
俺はステータスを再確認する。
【功績】項目に
・《魔物討伐(正体不明)》
・《救援未申告:評価上昇不可》
……どこまでも自由なこの世界のシステムに、ため息が出る。
その時、ふと視線を感じて顔を上げると、金髪の少女がこちらを見ていた。
「昨日の……!」
彼女は俺の前まで歩み寄り、静かに囁いた。
「やっぱり、あなたでしょ? 昨日の夜、私……見てたの」
一瞬焦るが、彼女の声は優しく、敵意はない。俺は無言で頷く。
「私、エリナっていうの。……お願い、助けてほしいの」
話を聞くと、村では最近“村人が記録ごと消える”という事件が続いているという。誰も覚えていない、記録もない、けれど確かにいた人が消えている。
「そんなの……まるで、データ削除みたいじゃないか」
異世界でゲーム用語を使ってしまうあたり、だいぶ順応してきた証拠かもしれない。
エリナは続ける。「それだけじゃないの……私も、自分のステータスが少しおかしいの」
恐る恐る彼女が見せたウィンドウには、確かに異変があった。
【種族:人間(?)】
【覚醒率:73%】
「人間……じゃない? え、バグ持ち仲間!?」
思わずツッコミを入れそうになるが、エリナの真剣な眼差しに口をつぐむ。
「お願い……一緒に、この村の秘密を探って」
その目に宿る決意に、俺は抗えなかった。こうして俺は、エリナと共に“村の真実”へと踏み出すことになる。