第5話「エラーアイテム『???の剣』入手」
翌朝、森の中を探索していると、妙な光景に出くわした。
「……なんだ、あれ」
一筋の光が差し込む木漏れ日の中に、一本の剣が地面に突き立っていた。古びているのに、なぜか周囲だけが清らかに輝いている。
「こういうの、だいたい伝説の武器フラグなんだよな……まあ、拾うよな!」
剣に手をかけると、軽く引き抜けた。その瞬間、ステータスウィンドウが自動で開く。
【???の剣】
・攻撃力:∞
・効果:未定義
・副作用:クラッシュの可能性
「クラッシュって、またやべーこと書いてあるし!」
見た目は普通のロングソード。けれど明らかにただの武器じゃない。表示された副作用は『クラッシュの可能性』——つまり、持ってるだけで世界そのものを壊しかねないリスク。
「これって、俺が持つべきじゃないやつなんじゃ……いや、逆にバグ持ちの俺だからこそ使えるのか?」
少しだけ剣を振ってみる。軽い。重さがない。というか、剣を振るたびに空間が一瞬だけざらつくような、バグじみた違和感がある。
「……これ、本当に武器なのか?」
よく見ると、剣の柄には見たことのない文字列が刻まれていた。数字と記号の羅列——
【#UNDEFINED_OBJECT_ID_6724-AZ】
「アイテムっていうより……データだな、これ」
その場で剣をしまおうとした瞬間、またしてもステータスに異変が起きる。
【新スキルを検出:《装備不安定化》】
「うわああまた増えた! もう勘弁してくれ!」
スキル説明には“装備中、確率で現実座標に干渉”とだけ書かれていた。
「確率で世界に干渉ってなんだよ……。怖すぎる」
剣をどうするか迷ったが、結局、俺はそれを背に背負うことにした。自分が何者で、この力がどういう意味を持つのか——まだわからない。
でもきっと、答えはこの“???の剣”が握っている。
「行くか。バグってるけど、この世界を少しでも知るために」
決意を胸に、俺は再び森を抜けて、まだ見ぬ町を目指して歩き出した。
——第6話へ続く。