第4話「スキル欄が急にバグる」
森の夜は思ったより静かだった。焚き火のパチパチという音だけが、暗闇に小さく響く。
「こんな環境で寝るの、人生初だな……」
転生したてで戸惑うばかりの一日だったが、どうにか生きていた。食べ物が不要なのは幸いだが、精神的な疲労はどうにもならない。
「ちょっとステータス確認しとくか。何か増えてたりしないかな……」
俺は念じてステータスウィンドウを開いた。すると、確かに何かが変わっていた。
【スキル】
《未登録》《未登録》《未登録》《暴走モード》←New!
「うわ、なんか増えてる! いつの間に!?」
何の予兆もなかった。しかも“暴走モード”なんて、名前からして嫌な予感しかしない。試しにウィンドウ上でスキル名に触れようとすると——
「……っ!? 画面がバグってる!?」
画面が一瞬ザザッとノイズを走らせ、スキルウィンドウがぶれる。赤文字で【暴走モード:発動準備中】と表示され、端に【強制終了】の表示が点滅していた。
「強制終了って……俺の命ごと終了したりしないよな!?」
慌ててキャンセル操作を試みる。幸い、キャンセルが受け付けられたようで、画面は元に戻る。ドクドクと心臓の音がうるさい。
「……いやいや、シャレになってないぞこれ」
冷や汗を拭いながらも、どうしてこんなスキルが勝手に追加されたのかが気になる。
「もしかして、あの魔物倒したから……? ワンパンで倒せる異常さに、世界の方がバグって反応してんのか……?」
自分で考えてもさっぱりわからない。が、確実に言えるのは、俺のステータスはただの“チート”じゃないということだ。
「これは……使いこなせれば最強だけど、一歩間違えたら即死ってやつだな」
とりあえず今夜はスキルには触れないと誓い、寝袋に体を滑り込ませる。空には満天の星。
「バグってても……少しは楽しめるのかもな、この世界」
不安とワクワクが入り混じる気持ちを抱きながら、俺はゆっくりと目を閉じた。
——第5話へ続く。