第2話「不死身だけど痛いのは嫌だ」
森の奥を進むにつれ、俺は自分の異常さをさらに自覚することになった。
まず空腹にならない。昼を過ぎても腹が鳴らず、水を飲まなくても喉が渇かない。次に、木の枝で足をひっかけても傷一つできない。
「HP無限って、こういうことか……」
試しに指で小枝を強く押し当ててみたら、枝のほうが折れた。
だが、問題は「痛み」は感じるということだ。
森の中で転倒し、転がった際にはしっかりと痛みが走った。体は無傷でも、神経は正常らしい。つまり——
「死なないけど、痛みは感じるって……最悪じゃね?」
とりあえず、次に目指すのは人里だ。情報が欲しいし、この世界でどう生きていくか考えなければならない。
道中、森の出口付近に小さな村を見つけた。喜び勇んで村に入ろうとした瞬間、村人たちが俺を見て硬直した。
「お、おい……あいつ、ステータスが読めないぞ……!」
「なに?『攻撃力:ERROR』って……」
ギルドに登録しているらしい村の衛兵が俺に近づいてきた。
「すまないが……君、この村には入れない」
「は?」
「危険だ。君のような“バグ持ち”は、村を混乱させるだけだ」
まさかの、異世界転生して早々の“追放”である。
——第3話へ続く。