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プロローグsideA Ⅱ

 それからしばらくして、会場に人が集まり、試験官たちがぞろぞろとやって来た。



「これから、あなたたちには五人一組に分かれてもらいます」



 試験官の一人である男性がそう言いながら手を挙げると、内ポケットのカードが振動した。

 取り出してみると透明だったはずのカードには番号が映し出されていた。


『A25』


 私のカードにはそう映っている。

 隣を見ると由愛ちゃんが静かにカードを見せてきた。


『G48』


 私とは違うチームのようだ。

 ま、この人数ならそうか。



「一次試験ではこの五人の中から三人を合格とします」



 このチーム分けは協力するためのものではなく、競う相手のようだ。

 なら、由愛ちゃんと別々でよかったと思うことにしよう。

 それにしても、五分の三で通るとは思ったよりも甘い裁定だ。

 てっきり一次試験で十分の一くらいは落とすものだと思っていたが、これなら余裕で受かりそうだ。

 なんたって、私は自他ともに認める文武両道、才色兼備、頭脳明晰、運動神経抜群の超高校級美少女なのだから。



「試験内容はいたってシンプル。これから転送される仮想宇宙にて三つだけあるフラッグを先に獲得すること」



 仮想宇宙とは疑似的に生成されるバーチャル世界のようなものだ。

 温度、湿度、感触。すべてがリアルに反映される。

 これまで収集したあらゆる星のデータの中からランダムに生成された環境が試験会場となるようだ。

 灼熱の大地、極寒の海、蒼天の摩天楼、真空の山岳等々。

 どんな環境でも適応できるかの対応力も試験で見るのかもしれない。

 そして、この試験で最も重要なのが……。



「本試験で起こったすべての出来事において、当社は一切の責任を負わないものとする」



 要するに死んでもそれは自己責任だということだ。

 ま、そんなことを言われて帰るような意気地なしはここにはいない。



「じゃ、またあとでね」



 由愛ちゃんと別れ、私は指定された部屋へと向かう。



「ここかな?」



 『A25』と書かれた扉を開け、中へと足を踏み入れる。

 部屋の中央には円形の台があり、そこから仮想宇宙へと転送されるのだろう。

 その台から無数のコードが伸びており、その先にあるコンピューターの前に二人の職員が立っていた。

 どうやら試験準備のために仮想宇宙の設定をしている最中なのだろう。

 ま、彼らのことはいったんどうでもいい。

 それよりも……。



「うげ……」



 中にはすでに私以外の四人がいた。

 そして、その中に見知った顔があり、つい声が漏れてしまった。



「…………」



 私のほうを見向きもしない彼女は百合園学園の制服に身を包み、涼し気な顔で天井を見上げていた。

 そう、先ほど話題に上がった『この高校生がすごい』にノミネートした女子高校生。

 名前は確か、嵐山コトネ。

 間違いなく彼女は一次試験を突破するだろう。

 となれば、このチームでの合格枠は一つ潰されたと言ってもいい。

 けど、他が弱っちこかったら関係ない。

 そう思い、他の参加者たちを一瞥する。

 一人は筋骨隆々の大柄の男。

 もう一人はすでに半泣きになっているそばかすの少女。



「あれ?」



 そして、最後の一人はまたしても知っている顔だった。



「もしかして、星海君?」



 中肉中背の特筆すべき点が何もない平々凡々な少年。

 彼の名前は星海翔琉ほしうみかける。私のクラスメイトだ。

 いつも両腕に包帯を巻いている少し変わった生徒だ。多分中二病と言われるやつなのだろう。

 そのせいかクラスのみんなは彼に近づかず、ひとりっきりだ。

 彼について知っていることはこれくらいだ。まともに会話したことはないし、彼が話しているところも見たことがない。

 私が主人公だとしたら、彼はモブと言ってもいいほど存在感のない少年だ。



「……姫宮さん?」



 私に声をかけられた星海君は一瞬戸惑った表情をし、私の名前を呼んですぐ視線をそらしてしまった。

 ははん、さては私みたいな美少女に話しかけられて緊張してしまったのかな?

 ま、しょうがないね。普段誰とも会話しないぼっちくんじゃ。



「仮想宇宙の構築が完了しました。受験者は転送台の上に立ってください」



 職員の指示に従い、私たちは部屋の中央にある転送台の上に立つ。



「試験時間は転送開始から二時間。フラッグを取った者はその時点で合格とし、三人の合格者が決まった時点で試験終了とします」



 最後の最後に職員から試験の詳細について説明される。



「では、これより試験を開始します」



 その言葉と同時に私たちは淡い光に包まれ、そして視界が真っ白になった直後、仮想宇宙が目の前に広がっていた。



「って、ここが試験会場?」



 どんな過酷な環境が用意されているかワクワクしていたが、蓋を開けてみれば見慣れた光景が広がっていた。

 大小さまざまなビルに、舗装された道路、ビルに埋め込まれた大型モニターには3D巨大猫が映し出されていた。



「どう見ても新宿だよね?」


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