24 未来へ向けて
私達は馬車の中にいた。
私にとってこの道のりは長くて、悲しい思い出を思い出させるような重くて、でもほんの少し懐かしさを感じる、そんな道だった。
私達は、私の、エリーゼの両親が住む実家へと向かっていた。
私達は、お互いの過去という重い鎖から解放し、新しい人生を歩み始めた。
正式な婚約も決まった。
でも、まだ成人に満たない私達はお互いの両親の許可が必要だった。
ここからが私達の最初の試練。
お互いに緊張しているからか馬車の中は驚くほどに静かだった。
カイル様は窓の外を見て眉を少しキュッと吊り上げて難しい表情をしている。
私は、そんな彼の横顔を見ながら、呼吸を整える。
(私があの家を出てからなん年が経っただろうか。)
正直家に帰るのが怖い
もう私に笑いかけてくれることはないだろう父と母。
母とは幼い頃よく一緒に出かけたりしていたが、そんな記憶はもう霧がかかったように霞んでしまって、よく思い出せない。
両親の顔と言われて思い出すのは、私に向ける嫌悪の顔。
貴方たちは今何をしているの
私の事をどう思っているの
出ていった時、どんな気持ちだったの
聞きたいけど、聞けないこと。
だって、"別に''とかなんとも思われていなかったら悲しいから。
嫌いとか、そういう言葉より傷つく。
娘に対して無関心だと言うような彼らの態度が、
両親は私を迎え入れてくれるだろうか。
どうでもいいと思っていた。
私を捨てた彼らが大嫌いだった。
でも
この長い時の中で、なにかが変わっていたらと期待している憎い自分がいる。
悔しい。自分の親はいつまでも、自分の親なのだと実感する。
まだ自分は彼らの娘だと自覚している自分がいる。
考えれば考えるほど怖くなって、私も向かいに座るカイル様のように窓の方へ目線を動かした。
すると、カイル様は私の方を向いて、そっといった。
「…怖いのか?」
図星だ。
私が何も言えずに俯き、眉を下げた表情で彼の方をそっと向くと、彼は優しく微笑んでくれた。
「心配しなくても大丈夫。
僕が何とかするから。」
さり気ない彼の一言が私の心の安心材料になって、心がちょっと軽くなる。
彼と結婚して良かったと思う。
まだまだ長い実家への道のりをガタガタと小刻みに音を鳴らしながら進む馬車の中で。




