八話 お風呂
「「「ごちそうさまでした!」」」
「さて。夜ごはんも食べましたし。お風呂に入りますか♪」
よかった…これで食住が安定した文化的な生活が送れる。
「お風呂ってなに?」
そうだ。このドラゴン娘水浴びしかしたことなかったんだった
「お風呂っていうのは…暖かい水浴びです!」
「わー!楽しそう!入る!」
「せっかくですし一緒に入りましょう!」
「やったー!」
「…え……一緒に…?」
「…嫌ですか?」
「ワガママ言ってすみません…出来れば一人で入りたいです…」
「えー!!!ルテロッテ!一緒に入ろうよ!」
…せめて一人で入らせて欲しい…謎の罪悪感で死んでしまう
「まぁまぁエメラちゃん。ルテロちゃんも一人で安心して入りたいんですよ…そうですね…ルテロちゃん。赤スライムの使い方は分かりますか?」
「赤スライム…?」
「…知らないですか…そしたらどうしましょうかね…」
え。風呂に入るのにスライム使うの?
「先にルテロちゃんだけ入っちゃいましょうか。エメラちゃんは私と一緒にあとで入りましょう」
「はーい!そしたら私ゴロゴロしてる!」
「…ルテロちゃん…一回だけ使い方を解説するために一緒に入りましょう」
「……………はい…………分かりました………」
俺はディアさんと脱衣所へ向かった。ディアさんは脱がず俺だけが脱ぐはめに…いくら俺が子供とはいえ女性の前で服を脱ぐその行為…生き恥かもしれない…
風呂場に向かうと大きな釜風呂が一つと桶と座れる木の椅子があった。
「さ。まずは座ってください」
俺は言われるがまま座りディアさんの対応を待つ
「これが赤スライムです。これを使って身体の汚れを取っていきます」
そう言いディアさんは小瓶を取り出して蓋をあけ赤いスライムをすくい上げ俺の首もとにくっつけた
「これを全身に塗ってください!」
赤いスライムはヌメヌメしており触ると若干動いている。しかし嫌悪感はあまり感じなくむしろくすぐったくて気持ちいい
全身に塗り回すように赤いスライムを優しく掴んで首から胸元。へそから腰にかけて塗り回していくと塗ったところが泡状になり身体の老廃物が抜けてく感覚がある。これすごいな…
「髪も塗ってください!」
髪も塗る。髪に塗るとスライムはさらに泡立て髪を全て包み込んだ
「ある程度塗れたらスライムをこの瓶に入れてください」
俺はスライムを瓶に優しく入れてディアさんから蓋をもらいしっかり詰め込んだ
「そしたらこの桶でお風呂からお湯をすくって泡を洗い流してください!」
言われるがまま桶を自分にかける。泡がお湯とあわさると一気に溶けて洗い流れていく。ヌメヌメもお湯がかかると一気に取れてとても綺麗に洗い流せた
「そしたらあとはお風呂に気が済むまでは入る…と…お風呂の流れはこんな感じです!」
「なるほど…ありがとうございます」
「ふふっ…釜風呂のルテロちゃんも可愛いですね♪」
そう言うとディアさんは風呂場の出口に向かうと
「それじゃあごゆっくり」
そう言い残して風呂場を出た。俺は一気に肩の力が抜けて足を伸ばした
「ふぅ~…」
一日過ごしてみて…本当にすごく生きてる感じする。
なにこの生活楽しすぎる。いっぱい働いて?美味しいご飯食べて?お風呂で足伸ばしながらゆっくりして?面白い勉強をする。
幸せ以外の何物でもない。少なくともウィキペディアとにらめっこして自分の趣味とレスバと株投資だけで暮らしてた生活のうん十倍楽しい。
死にたいと思ってたのが馬鹿馬鹿しくなるくらいには幸せな生活だ。こんな生活俺が送って良いんだろうか…
「良いと思うか?」
「…!?…柿崎…っ」
これは幻覚…分かってる…分かってるんだ…
「お前だけ幸せになるなんてさせない……俺は待ってるよ…いつでも…」
「…あ…あぁ……あぁっ!!」
幻覚が薄れてく…身体の震えが止まらない
「……出よう…」
一人で居たら…こうなる……心が壊れる…死にたくなる………
「エメラ……ディアさん…」
俺は何て情けないんだ…
「あ。もう出たんですか?」
「ルテロッテ!どうしたの?そんな顔して…」
俺はタオルを羽織りエメラとディアさんがいるリビングに来ていた
「…すみません…やっぱり一人じゃ寂しいので一緒に入ってくれませんか?」
「……?…あ!うん!良いよ!」
「ルテロちゃんは可愛いですね♪」
結局俺は目を反らし極力見ないようにしてディアさんとエメラの三人で入った。
釜風呂は一人だと広く足を伸ばせるが三人になるとどうしても密着してしまいこれはこれで恥ずかし過ぎて死にそうになった。
でも…あの幻覚に比べれば…
「ふー!気持ちよかったー!」
「ですね~♪」
「そう言えばルテロッテちゃん。どうして天井をずっと向いていたんですか…?」
「覚悟です」
「…どう言うことですか?」
「聞かないでください」
「あ。分かりました」
【エメラ視点】
私は今…ディアさんの家で暮らしてる。昔から一人だった私にとってこの生活はとても楽しい。
どうやら私達はここから出れないらしいけど…でもディアさんとルテロッテがいるから怖くもないし寂しくもない。
しばらく私は二人と生活して気付いた。
ルテロッテって変な子なんだなって
まず…ルテロッテは私と見え方が違う。
私は昔の話をディアさんに聞いてて遠い昔に大きな戦争…?が起こった話を聞いたとき…酷いと思った。しかしルテロッテは何も感じない所かとても楽しそうに聞いていた。何をおもって話を聞いていたんだろう…もしかしてルテロッテって人を殺す事。殺される事が好きなのかな…だとしたらちょっと怖いけど
でも生活しててもそんな素振りは見せないし優しい…だから私はルテロッテの表面を信じる。
あと最初のお風呂以降。ルテロッテはディアさんとは入らなくなり私とだけ入るようになった。もちろんお風呂に入ってるときはずっと天井を向いてる。なんで?って聞いても「覚悟」としか言わない。覚悟って何?何言ってるのだか分からない。こういうところも私とルテロッテが違うってことがよく分かる。私はディアさんとルテロッテと三人で仲良く入りたいんだけどな…。でもディアさんにはちゃんと「一緒に入りたいんですけど…ごめんなさい…ボクのワガママで…」って謝ってるらしいし何か事情があるんだよね…?ディアさんが嫌いって訳じゃないよね…?
嫌だよ?ルテロッテとディアさんが喧嘩するの
あ。そう言えば私達は文字をディアさんに教えて貰った。文字を教わってから私はディアさんから貰ったノートに文字を書くようにした。
どうやら私はルテロッテと違って覚えるのが苦手らしいから沢山書かなきゃ…。ルテロッテに置いてかれないようにしなきゃ…
お手伝いの件に関してもルテロッテは変だな。って思う
例えば野菜を収穫するときルテロッテは何故かニンジンを三個あけて採って。三個あけて採って。を繰り返す。「全部採れば良いじゃん!」って言ったら「この植物は三本置きに根っこが絡まってるから三個置きに採ってくのが一番早く終わる」って言ってた。他にも箒でホコリを払うときルテロッテは変な順路で払っていく。「どうしてそうやって払うの?」って聞いたら「この方がホコリを取った場所が覚えやすい」って言ってた。理由は確かにあるんだろうけど…何言ってるか私には分かんないや
あとルテロッテはバナナ?っていう食べ物に興味津々になった。私にはよく分からないけど…ディアさんにバナナを沢山作ってもらって三本一気に加えて食べていた。あんなに幸せそうなルテロッテの顔は忘れることはないと思う。
「なんでそんなにバナナが好きなの?」って聞いたら「…ボクの三種の神器だから」って言ってた
三種の神器って何?
あとルテロッテは…私達に内緒でパンツを被り始めた。使ってない自分のパンツを自分の枕の下に隠して。私達が部屋に居ない時辺りを見渡して自分のパンツを被ってバナナを加えてディアさんの書斎から持ってきた本を体を丸くして読んでる。何してるんだろうって疑問に思ってるんだけどルテロッテはとても集中して本を読んでる。一回入り込もうと思ったけどディアさんに止められた。なんでか聞いたら「…ルテロッテちゃんの邪魔はしないようにしましょう…エメラちゃんも邪魔されたら嫌でしょう?」
って言われた。なんで履くものを被るんだか私には理解が出来ないし。バナナを加えるのかも丸くなって読むのも理解出来ない。だけど…ルテロッテらしいな…と言えばらしいな…
よし!私は気にしない!