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考福  作者: 廣瀨 玄武
過去と記憶が紡ぐ日々
9/11

考福9.真実が導く涙の日

【真実】

時に人を喜ばせる。悲しませる。落ち着かせる。苦しませる。

溶けていく棒アイス。隠れていたのは当たりか。無か。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

有他の真実を知った私は、

この閉鎖された空間で一人ぼっちになった。

手には暗上先生の連絡先。

部屋の鍵は開いている。ただ、外に出るのが怖かった。

無機物が二つある。

「あなた達は、人工知能?」

《しばらくお待ちください。》

『私は研究施設警備用ロボットΔου-λοι087』

『私は人工知能脅威対策用ロボットSer-VANT992』

「ここ、研究施設なんだね。あなたの方は…」

『私は人工知能脅威対策用ロボットSer-VANT992』


やっぱり、そうだったんだ。


Ser-VANT992。確認をとった私は、勇気を出して外に出た。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


先程まで家の形状を保っていたが、

またあの白い空間に切り替わる。つまり、カサがいる。

「そろそろ気づいてきた?自分が何者か。」

「分からない。何故僕が白山に狙われたのかも分からない。」

「いい加減にして欲しいな。あなた、医学生なんだってね?」

続けてカサは問う。

「なんで医学生なの?」

「ゴミ置き場に捨てられてた僕を助けてくれた人がいたんだ。」

「ユーリか。」

「うん。僕もそうやって、色んな人を救えたらって。」

何か可哀想だね。

カサはそう思ったような顔つきで僕を見る。が、すぐに戻る。

すると、カサは涙を流し始める。


「カサの最初を、返してよ……。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

家だ。家だったものだ。

後ろから足音がする。

「ミハタちゃんだ」

「…って、思ったでしょ。というか、分かったでしょ。」

お見通しだったようだ。

ミハタちゃんは笑っていた。が、下を向いた瞬間。

携帯を取り出した。

「暗上先生、」

その名前を聞いた瞬間、僕の過去がえぐり取られた。


「彼、手遅れでした。」

ミハタちゃんは泣きながら報告する。

そうだ、これはきっと、僕がやったのだ。

ユーリさんは、僕が、殺したのだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ねえねえ黒海、名前どうしよっか?」

「そうだなあ。俺は黒に海で黒海。紅谷は紅に谷で紅谷でしょ」

「あ!じゃあ色に関する名前にする?」

「そうだね俺もそうしたい。うーん……」

「あっ!こんなのはどうだ!」

「あっ!こんなのどう??」



「「虹!」」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「……何!?……分かりました。今向かいます。」

私は黒海の許可のもと、Ser-VANT992と向かった。

急ぐ。

急ぐ。

もう君が、人を殺す姿は見たく無いんだ。


また脳が私に話しかける。

「アメ。」

「彼がまた人を殺したそうです。」

「それは、安楽死?」

その単語に、喉を詰まらせながら否定する。

「……いいえ。」

「私は彼を救いたい。」

「救うって。先生にとって救済って何?」

「私にとって救済とは…、あるべき場所に、正しい方法で返す事です。」

「アメ…。もう、白山(シロヤマ) 紅谷(ベニヤ)さんでは無いのですね。」

「先生がそう思うなら。」


「いつでも虹を作る準備は出来てたんだけどなあ。」


急ぐ。

急ぐ。

足を止め前を向く。

「暗上先生!!」

そこには浅田 深畑さんと、倒れた劣表 優裏さんがいた。

彼の姿は、無かった。

Ser-VANT992は彼のいるであろう方向へ走り出す。

「まだ助かる。優裏さんは私が対処します。」

できるか、今の私。


““私の殺し方を間違えた貴方に何ができるの?””


心から聴こえるその声を遮って、私は走った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

沈黙が鳴る部屋。

『Ser-VANT992との通信が切断されました。』

「そうか…。」

『向かわなくても良いのですか?』

「向かうさ。デューロイ。君はここに居てくれ。」

「私がケリをつける。」

『スリープします。』

デューロイの電源を切り、

二度と帰ってこないであろう研究施設からこの身を離した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

室内に響き渡る心電図の音。

リズムは刻まれていない。

「医師免許を剥奪されたのに、無理したからだよ。」

「じゃあ見捨てれば良かったのですか!?」

「変わってないね。先生。」

「え…?」

「黒海が、彼を止めに行ってる。」

「暗上先生。」

しかし私はまた一人…

「私はあなたに助けを求めてる。なんでか分かる?」

「私にとってあなたはまだ、一人の医者なの。」

だが私はあの時彼を利用して、あなたの最期を苦しめた!!

「彼だって!私にとっては救世主。」

「私、子供がいたんだ。もう名前も決めてて。」

「虹。あの子が歩いた道は、全部宝物。」

「虹が生まれて、大きくなったら渡そうと思ってた。」


涙を拭くと、右手は小さな傘を握っていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

有他は、泣いてる。

泣いてるに違いない。

自分が人を殺めたこと。



これまでに何人も殺めていたこと。

NEXT:10.雨の降る夜の日→

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