考福7.君の手に触れた最後の日
【回収】
その目的は定かでは無い。
一方的である場合があれば相互的である場合もある。
受け渡されるモノは物か。者か。
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ある学校の帰り道。
すっかり田舎に覆われたミハタちゃんの周りには最早女子生徒
すら寄りかからなくなった。
彼女は幸せなのだろうか。そんな事を考えながら歩く。
笑いながら。平凡な話をしながら。
今日はいつもより気分が良い気がする。
先日貰ったロールキャベツ写真集(ミハタちゃんのサイン入り)のお陰かもしれない。
目の前に男性が姿を現す。
僕とミハタちゃんは男性を中心に円を描く様に避ける。
少し楕円寄りの円を描いた2秒後。
先程の中点に引き寄せられる。
それもそこそこ強引に。
男は言う。
「こっちに来い。」
また違う男の声がする。
「私はキミを回収しなければならないのです。」
必死に抵抗する。手を伸ばす。
ミハタちゃんの手が触れたその瞬間、僕の視界は認識をやめた。
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呼び鈴。
深畑ちゃんだな。何故か分からないが確信を持てる。
「はーい」
鍵を開けると同時に勢いよく引き戸が引かれる。
激しい音をたてながら、深畑ちゃんが現れた。
「どうしたどうしたー!そんなキツそうな顔して」
「私を、匿ってください!」
理解が出来なかったが、とりあえず家に避難させた。
「なに?有他が…?」
彼女の話を全て聞いた俺は、嫌な予感がした。
俺の中の空気が不協和音を奏で始める。
その時、何者かが扉を開ける音がした。
しまった。あまりに唐突な出来事に鍵をかけるのも忘れていた。
恐る恐る玄関の方を見ると、無機質な人型がそこにはあった。
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回収した物が一向に動かない。
「あの子は誰なんでしょう?」
確かにそこに、見知らぬ女が隣にいた。
「友達だろうか…。」
「いずれにせよ、あの子が悲しむ前に彼を離さなくては。」
それはそうだ。おそらくあの女は何も知らない。
だが不都合な事に、彼女は彼から離れたく無いそうだ。
私は起動スイッチを押した。
「行け、」
「Δου-λοι087-デューロイ。」
「Ser-VANT992-サーヴァント。」
『捕獲対象を入力してください。』
『警備対象を入力してください。』
「彼らは…?」
「研究施設警備用ロボット-Δου-λοι087」
「人工知能脅威対策用ロボット-Ser-VANT992」
「私の開発した非常に優秀な部下だ。」
私はサーヴァントに回収物の名称を入力し、
デューロイにはこう入力した。
[浅田 深畑]
するとデューロイは、研究施設を離れていった。
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