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考福  作者: 廣瀨 玄武
過去と記憶が紡ぐ日々
6/11

考福6.医者が患者を殺めた日

【死】

生命の結末。場合によっては救済。

果たしてそうか、その果てはそうか。

人が人を殺める。それに人は喜怒哀楽を駆け回る。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この手で彼女を救えただろうか?

この手で意志を受け継いだのか?

この手で誰かを苦しめたのだと、粘りつく慟哭。


向き合うべきは、私だけ。

全て私が悪いのです。


イヤーワームはリズムを刻まぬ心電図。

彼女の最後の言葉は、音でしか無かった。

彼女の墓にラズベリーの花を一本添えました。

「まだ後悔しているのか、暗上(アンジョウ) 明下(メイカ)。」

「黒海さん…。」

「本当に、紅谷(ベニヤ)さんの件に関しては…何と言ったら良いか…」

「…ああ。だが私にも責任がある。」

その言葉に、私は何も返せなかったのです。

「彼がいなくなったというのは、本当ですか?」

「ああ。一刻も早く回収しなければ…紅谷のようになる者が増えてしまう。今の所そのような被害は無いが回収を急ぐ。」

私はいつまで後悔しているのだろう。

そう思いつつも、後悔しなければいけないという使命感に、

脳を抑えられる。


あれは、雨の降る夜の日。

男性が、1人の女性を抱えて私のもとにやってきたのです。

交通事故のようでした。

女性の方はかなり重症でした。

肩の位置はずれ、首は曲がり、眼球の一部がはみ出ている。

異常なまでに外気にふれる眼球の下から、涙。

痛ましいとはまた違う、切なさを感じてしまいました。

男性の方は腕が機能せず、切断をすることに。

女性の方は感情だけが残り、喋る事はできた。


「お願いします、暗上先生。」


彼女は今でも、私の脳で願い続けている。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

“カサの最初を返してよ”


あの空間は何だったのだろうか。

あの少女は何者だったのだろうか。カサと言っていたが。

確かに、夢ではなかった。


「おーい、飯だぞ有他ー」

その声はいつも僕を現実の中の現実に引き込む。

「はーい」

白米と味噌汁に加え、スパゲティとピザ、トウモロコシの入ったラーメンやジャガイモが机に置かれ、ユーリさんはそれらをひとりで全て食べた。

最初はその全てを網羅したような料理の種類を見て

(ここが地球か…)とか思ったが、もはや見慣れた光景だ。

イマイチお腹の空かない僕は、毎回ユーリさんの食べる姿を眺めるばかりだった。

何故こんなに食べられるのだろう、胃袋が複数あるのか?

そんな馬鹿げた考察をしている間に、机の上の物は消えていた。

「ごちそうさまでした。」


毎日3回行われる形式的な挨拶をして、その時間を終えた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

脳から声がする。

「アメ。」

その声を聞くと、やはり涙が流れて止まらない。

「申し訳、なかったです。」

何度も何度も謝罪を繰り返す。何度も何度も。

「謝らなくてもいいってー!」

彼女は元気そうな声で私に言う。

「真面目なお医者さんだねー、暗上先生は。」

その言葉を、どこか正面から受け止められないでいた。

「黒海は?」

「…向こうの部屋にいます。」

「まだなんか作ってるんだ。変わらないね。」

彼女の親切に気づけないまま、話を戻す。

「全て私のせいです。紅谷さんを苦しめたのは、私です…」



あの時には、日本では安楽死が認められていた。

考福7.君の手に触れた最後の日→

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