表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
考福  作者: 廣瀨 玄武
過去と記憶が紡ぐ日々
5/11

考福5.カサの最初を奪った日

【友達】

仲間。期間は人によるが、理解し合えるべき存在。

そこから恋人へ発展する可能性。縁を切る可能性。同居。忘却。

様々な方面へ糸を伸ばす、中核。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

数ヶ月が経ち、ミハタちゃんが家に来る事も多くなってきた。

呼び鈴。ミハタちゃんだ。

「おじゃましまーす!」

「お!深畑ちゃんじゃないかー、有他。今日帰ってくるの遅くないか?」ユーリさんは言う。

そうだ、今日は帰るのが遅れてしまったのだ。

「変な寄り道してないだろうなー?」

していない。そう返事をしようとしたその時、

「おじさん聞いて下さいよー、彼ねー、講義でめちゃくちゃ寝るんです!」

被せるように僕の欠点を吐く。

「なんだとー?有他お前、出来るからって調子乗るんじゃないぞー?自分で学費出してる訳じゃないんだから…」

仕方がない。一定の時間になると何故か毎回目を閉じてしまう。

生き物の運命だ。

が、認めたくないという気持ちがどこからか湧いてくる。

「寝てません。僕は1秒たりともこの瞼を下に下げたことはありません。」無理な言い訳をしてみた。

「本当かー?」

疑うミハタちゃん。やはり少し田舎の匂いがしてきたな。

「まあいいや。まだお母様は海外出張ですか?」

そうか、ミハタちゃんは知らないのか。僕が拾われた存在である事を。ユーリさんはカタチだけの父、架空の母は海外出張中という設定でミハタちゃんに浸透しているのだ。

つまり今僕は、『劣表(レッピョウ) 有他(ユータ)』なのだ。

「きっとすっごく美人なんだろうなあ…有他のお母様」

それは僕がイケメンという解釈でいいだろうか。

「それって、ウチの有他がイケメンって事?」

聞くとは。

「ぜぜっ、全然関係ないですよね!?やる事山積みなんで帰ります!!おじゃましました!」

嵐のように過ぎ去った。僕の母 ──


途端、家が何も塗られていない果てに切り替わる。

複数の傘。間違いない。僕が僕として最初にみたあの景色だ。

やはり、いる。

「あなたに母親を知る権利なんて無い。」

「誰なんだ、君は。誰にだって知る権利はある。」

「カサ。あなたはその権利を奪った。成功したと勘違いしているのか?ふざけないで。」

そんな事を言われても、僕には何の記憶も残っていない。

口に出そうと思ったが、どこからか迫る圧に耐えられない気がして、口を開くのをやめた。



「カサの最初を返してよ。」



その言葉を聞くと、五感が家を認識していた。

NEXT:考福6.医者が患者を殺めた日→

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ